 |
日本で独自に研究を進める意味は2つあります。
1つめは科学的な理由です。現在欧米ですすめられているのは欧米人の遺伝情報の研究ですが、欧米人と日本人の遺伝暗号はかなり違っているということがすでに科学的にわかっています。したがって欧米人の遺伝情報を日本人向けの医療にそのまま適用することはできません。たとえば日本では毎年100人前後の子供がインフルエンザ脳症で亡くなっていますが、欧米の子供がこの病気にかかるということはほとんどありません。また頭痛がするとき、欧米人と同じ量のアスピリンを日本人が服用すると、多くの方が胃痛をおこします。一方日本ではほどんど見られないピーナッツアレルギーで、アメリカでは1年に100人程度がなくなっているのです。これらは欧米人と日本人の遺伝暗号の違いによるものです。
2つめは日本人の遺伝暗号に関する知的所有権を他国に握られると、新しい薬や診断方法を利用するときに特許使用料として他国にお金を払わなければならなくなる、ということです。日本は現在すでに世界有数の医薬品使用国であり、今後急速に高齢社会化するのにともなって医療費も増加するであろうことは世界中の周知するところです。言い換えれば医薬品や診断方法を開発・販売する側にとって日本は市場規模からも市場の成長性からも極めて重要であるということです。ですから日本が独自に、しかも先んじて行わなければ、欧米のどこかで医療への応用を目的として日本人の遺伝暗号が解読されることは間違いありません。これは最終的には患者さんと国の医療費負担を増やすことにつながります。
C型肝炎の診断を例にとると、1回の診断料数千円のうち数十%を2件の特許使用料という名目でアメリカの会社に支払っています。この特許の1つは肝炎ウイルスの遺伝暗号を利用する特許で、もうひとつは診断する技術に関する特許です。逆に言えば、日本の国と企業が連携して研究開発を進め、遺伝暗号と診断方法に関する知的所有権を取得できれば、患者さんや国が負担する医療費を節減することにつながりますし、またその特許が他国で利用されれば日本の国や企業に特許使用料をもたらすことになります。 |