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基調講演「オーダーメイド医療とバイオバンク」

拡大画像 この研究をスタートする背景にあるのはゲノム研究の進展です。皆さんメディアを通してご承知のように、ヒトの30億塩基対からなる遺伝情報であるゲノム、これを私は生命の設計図と呼んでおりますが、この生命の設計図を我々は染色体という形で見ることができますし、その根本となる化学物質はデオキシリボ核酸(DNA)と呼んでいるものです。奇しくもこのDNAが二本鎖からできているという論文は、ちょうど50年前に報告されました。50年たった今、我々はこの遺伝暗号の並び、この遺伝暗号の文字A,G,C,Tがどのように並んで、われわれのゲノムの設計図をかたちづくっているのかという情報を手にしました。これから考えないといけないのは、この膨大な生命の設計図を利用して、どのような形でこれを社会に還元していくかということです。社会に還元するためには当然、社会の理解を得て、社会の協力を得て、このプロジェクトを進めることが必要です。30億の遺伝暗号文字が明らかになりましたが、平行して明らかになったのは、我々の遺伝暗号は、我々の姿かたちが違うのと同じようにかなり違いを持っているということです。その違っている箇所というのは、零点数パーセントですが、数でいうと300万から1000万箇所の遺伝暗号が個人個人で違っています。この遺伝暗号の違いというものをもとにして、われわれは病気というものを考え、それを通して新しい治療法を開発したり、新しい診断法を開発しようと考えています。
拡大画像 生命の設計図であるゲノムには、その何百万箇所に個人差があります。これを遺伝子の多様性と呼んでいます。この遺伝子の多様性、つまり、「ある場所にあるタイプの人と別の人がいる」、このような遺伝子の違いというものを略してSNP(スニップ)と呼んでいます。この遺伝子の多様性は遺伝子の働きの質的・量的な違いを生みます。遺伝子というのは、我々の姿かたちを決めている源になるわけですから、それが個人個人で違っていれば、当然我々の姿かたちが異なります。なぜ違うかというと遺伝暗号が微妙に違っているからです。それから、病気になりやすさの違いも遺伝子が関係するということが明らかになってまいりました。エイズではすでに科学的に証明されていますし、みなさん、インフルエンザが流行ったときに「わたしは、全然かからない」「Aさんは熱がでやすいのに、わたしは全然熱もでない」という人もおられます。ひょっとするとSARSが日本に入ってこないのは、日本人がSARSにかかりにくい遺伝子を持っているからかもしれません。いずれにせよ、いろんな感染症に関しても、個人個人でウィルスのかかりやすさ、かかりにくさ、あるいは細菌に対する症状の重さなどが遺伝子の違いによって影響をうけるということが明らかになりつつあるのです。
それから、もう一点は薬に対する効き方、副作用に違いがあり、よく効く人、効かない人、あるいは先ほど話にも出ましたように非常に副作用の強い方もおられます。このようなものに、遺伝子の違いが関係しているということが、次第に科学的に明らかにされつつあるのです。

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