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基調講演「オーダーメイド医療とバイオバンク」

拡大画像 最後に責任者として申し上げておきたいことがあります。これは、プロジェクト全体の意志ではなく、私個人の考えであることを断った上で紹介させていただきます。このような遺伝子の違いを研究していくゴールとして、私は光の部分だけをこれまで申し上げてきました。病気の原因が解明されて、それを通して薬が開発される。あるいは、病気のリスクを判定して、それが予防につながる。あるいは、その遺伝子の情報を利用することによって、薬を効率的に使用し、副作用を回避することができるというような光の部分だけを申し上げました。ところが、皆さんご存知のように、遺伝子情報利用については、我が国では様々な形で問題が存在しています。その影の部分として考えられる問題として、社会保険に対して遺伝子の情報が使われて社会保険に入るのが不利になる可能性もありますし、遺伝子の情報によって様々な差別が起こりうる可能性があります。多くの方たちは、影の部分だけをとらえて、遺伝子研究そのものがけしからんとおっしゃいますが、私個人としましては、そうではなくて、我々がつとめるべきことは、光をいかに大きくして、いかに影を小さくすることではないかと考えております。
拡大画像 ことさら、遺伝子が違えば差別が起こるという考え方には私は反対です。我々は、皆同じだから平等であるという教育を多くの方が受けています。果たして我々は皆同じなのでしょうか。決してそうではないはずないのです。姿かたちが違いますし、いろいろ違います。本当は違っているのに、違っていることを認めようとしないからおかしなことが起こるのではないかと思います。どうして遺伝子が違っているからといって我々は差別をしないといけない、あるいは差別を受けないといけないのか。なんらかの病気になるかもしれないということは、我々皆がもっている問題であって、決して一部の人たちが持っている問題ではありません。この遺伝子の多様性というものを通して私が皆さんに申し上げたいのは、この遺伝子が違うということを、いわれなき社会差別をなくすためのいい教材にしていただきたいということです。違っていてもいいじゃないかと、違っていることを認めあうことから、問題の解決がスタートするのではないかと思います。違っているから差別を受けるのだ、だから遺伝子の研究は危ないのだと言っていても差別という問題を我々は回避することができません。我々が研究しなくとも、世界のどこかで研究が進んで、必ずそういう情報がリアルタイムで我々のもとに入ってきます。我々が考えないといけないことは、この遺伝子の情報をいかに社会に役にたてて、危険なことを防いでいくことではないでしょうか。この遺伝子の多様性を研究する研究者の一人として、やはり皆違っていてもそれを認め合おうという教育をしていただきたい、あるいはそういう教材としてこの遺伝子の多様性という問題を理解していただきたいというふうに切に望んでおります。
拡大画像 それからもう一点、メディアの方もたくさんおられますが、メディアは、医者とか研究者は悪いものだから、患者さんを利用して、自分の出世とか自分の名誉だけを追求しているというかたちでとりあげて、面白おかしく報道します。私は、自分が臨床医として働いた経験、あるいは実際、今、研究にたずさわっている人間として、決して我々は患者さんと対立する立場にはないということを強調したいのです。今日は、ALS協会の患者さんにも来ていただいていますが、本当に患者さんが何を求めているのか、ベッドで苦しんでいる人は何を欲しているのかということをもう少し理解した上で、様々なことを考えていただきたいと思います。私は、この研究を通して患者さんと医療に従事している方、あるいは我々医学研究者が連合軍を組んで病気と対立するのだというような姿勢を作り上げていく一歩としたいと考えております。一部の不届き者がいたことは否定しませんが、今まで志の高い研究者がたくさんおられ、真剣に病気の解明にと研究に取り組んでしているにもかかわらず、このような構図でとりあげられてきました。このような対立の構図では、本当にベッドで苦しんでいる人、あるいは今まさに死を迎えようとしている人にとっては何の救いにもなりません。我々がすべきことは皆が手に手をとりあって、病気に対決していくのだというふうに私は信じておりますのでこれを強調したいと思います。
拡大画像 さきほどから申し上げましたように、このプロジェクトは、社会の多くの人に認知して理解を得るということが非常に重要なことでありますので、我々はビデオも作りましたし、このような形でポスターを作っております。私が最後に申し上げたいのは、同じ病気で苦しんでいる方、あるいは我々の子供や孫のために是非とも協力していただきたいということです。我々は個人情報の管理にベストをつくしますし、研究に対しても最大限の努力をします。是非とも趣旨をよく理解していただいて自分たちの気持ちを未来につなぐという形でこのプロジェクトを発展させていきたいと考えております。いろいろ批判の目でみられる方はおられるとは思いますが、やはり病気というものをなくし、病気で苦しんでいる人たちを一日も早く救うためにも、このようなプロジェクトを推進していきたいと考えておりますので、是非ともご理解たまわりたいと思います。どうもご静聴ありがとうございました。

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