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シンポジストプロフィール(2003年10月現在、敬称略)
宮川豊子(ALS患者家族)

1947年7月18日 山口県に生まれる。
1965年   県立田部高校卒業
1971年   宮川幸博氏と結婚し横浜に移る。
一男一女に恵まれる。
1990年   夫の発病
1991年   夫の転勤で福岡に移り、現在は筑紫野市に居住する。

シンポジウム要旨
現在、在宅で夫の介護を始めて5年4ヶ月になります。
夫の病名は「筋萎縮性側索硬化症」と言う難病でこの病名が付いてから百年以上もたった今でも原因解明も治療法も確立していません。この病気は通常では「ALS」と呼ばれ、夫は発病して丸13年になります。
本日お見えになっている中村祐輔先生のことは「ジャルサ」というALS協会が発行する会報誌に寄稿していただいた「21世紀の医療はどう変わるのか?」を拝読して存じ上げておりました。難病への取り組みの第一歩にもっとも過酷なALSを選びたいとのご意向に深く感動しました。これまでにも、進行を遅らせる薬が出たという話が浮上しては消えていきました。そして朗報を得られないままに何人の患者さんが亡くなって行かれたことでしょう。
今回の遺伝子解析による原因解明とオーダーメイド医療の内容はとても奥の深い幅の広い物だと思いますが、不治の病を宣告された者にとっては希望につながる道がこれから開かれて行くのだと感じました。このALSという病気は、全身の運動神経と筋肉が破壊されるため、全身麻痺になり、早い人では一年で寝たきりになります。それだけではなく、食べ物を飲み込む力も、言葉を発する力も舌も回らなくなり、自力で呼吸する力さえも失われて行きます。生きていく術としては、人工呼吸器装着と、チューブからの流動食注入が不可欠となります。どんなに体が痛くても自分で寝返りを打つことも出来ず、どこかがかゆくてもかくことも出来ず、痛いところがあってもそれを訴える声も失ってしまいます。又、人工呼吸器のトラブルを周りの人間が気付かなければ、即、死に至ってしまう事もあります。全身麻痺になった時点で、もう時が止まってしまったかのような気がしますが、頭脳だけは最後まで侵されることなく、毎日確かな時を刻んでいきます。知覚神経や感情が置き去りにされたまま、人間としての機能をひとつひとつ奪い去られていく恐怖は、本人はもちろんですが、そばで見て何もしてあげられない家族の苛立ちは、言葉では言い表せないものがあります。
夫が発病したのは13年前の6月、42才の働き盛りの時で、福岡への転勤の直前でした。右手の脱力感から始まり、検査入院をした病院でALSの告知を受けました。当初は夫には告げられず、担当の先生からの「5年で寝たきりになるので福岡へ行って今のうちに仕事に打ち込み、好きなゴルフを存分にさせてあげてください」という言葉を聞いているうちに目の前が暗くなり、奈落の底へと突き落とされた思いがしました。 見知らぬ土地での闘病生活は壮絶なものでしたが、夫は病気をしっかりと受け止めて前向きに生きていく決心をしました。そしてこれまでに2ヶ所の病院で5年半の入院生活を送り、先生やスタッフの人たちのすばらしい橋渡しがあったおかげで、現在の在宅療養にまでこぎつけることができました。今も四苦八苦しながらも一生懸命に生きることに挑戦しております。  
ALSは治療法がない上に手間がかかるため、受け入れ病院が少なく、呼吸器を付けられないまま在宅で亡くなられたり、子供達の成長を見届けていたい気持とは裏腹に、これ以上家族に介護負担や経済的不安をかけたくないとい言う理由から、「家族のために生きて行きたい」の気持を通り越して、「家族のために死ぬしかない」の気持にまで追いつめられてしまいます。そして呼吸器装着をあきらめて亡くなられる患者さん達が後を絶ちません。
どんな病気でも尊い命です。生きる権利もあります。もっと希望を持って生きていける社会と、医療システムの向上を、私達は待ち望んでおります。
今回の遺伝子解析による病気の解明の取り組みは、命の続く限り、人工呼吸器を装着してでも、希望を持って生きていれば、出口の見えなかった暗いトンネルもいつかは出口が見えてくるのだと思いました。
まだうっすらではありますが、いつか必ず明るい出口に出て行ける日がやって来る事を信じております。不治の病で、希望を見いだせなかった様々な人達にも、やっと救いの手がさしのべられたのだと実感しております。
どんな病気も重くなってしまっては遅すぎます。病気にかかりやすい体質が、事前に判明できてそれを未然に防ぐ事が出来れば、こんな素晴らしい事はありません。ALS患者のように症状に個人差がある病気にとって、原因が解明できて、個人個人にあった治療が出来るようになれば、本当に素晴らしいと思います。
夫のからだが100パーセントもとのからだに戻るかどうかは疑問ですが、せめてもう一度口からおいしいものを食べさせてあげたいし、せめてもう一度口からおいしいものを食べさせてあげたいし、夫の口から再び言葉を聞きたいと思います。一日も早くゲノム医療が進歩し、多くの病気の人たちが元気になれる日を心から願っております。
 
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