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現実的な課題にひとつに、患者さんの協力を得ることがあります。このためには、私たちが何をやろうとしているのか、あるいは患者さんの試料をどのように扱うのかを十分説明した上で、理解いただき、その上で30万人の方に協力していただいて、DNA(遺伝子)と血清と呼ばれる血液のさらさらの上澄部分を集めます。そして、それらをバイオバンクジャパンという形で保管し、様々な医学的な研究に応用し、それを通して新しい治療薬、診断法の開発を目指したいと考えております。 |
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当然ながら、プロジェクトの内容として非常に大事なのは、個人情報をいかに厳重に厳正に管理するかという点です。その点に関しましては、私たちは現在できる限りの、最良の方法を選択し、それを組み合わせて、決して個人の情報が漏洩しないような措置を幾つか講じております。それらの点に関しましては、この後紹介させていただきます。 |
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最終的なゴールは、先程も言いましたように、患者さんに協力していただいて、いろんな病気の情報をデータベース化する、それらと遺伝子の情報、あるいはタンパク質の情報を見比べながら、病気の原因を解明し、新しい診断法を開発することにつなげたいと考えております。 |
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このような研究が、なぜ今始まったのかを説明します。このプロジェクトは唐突に始まったわけではありません。このような研究を大掛かりに進めることができるようになった背景として、皆さん言葉ぐらい聞かれたかもしれませんけれども、ゲノム研究という研究分野の発達、発展があります。ゲノムというのは、横文字ではなかなか分かりにくい言葉ですが、最も理解しやすい日本語として私が使っているのは「生命の設計図」という言葉であります。われわれはなぜ人間の形をしているのか、チンパンジーはなぜチンパンジーの形をしているのか、犬はなぜ犬の形をしているのか?それは、それぞれの生物種が特有のゲノム、特有の生命の設計図を持っているからです。
人の場合、この生命の設計図は、左に示すような染色体という形で目にすることができます。この染色体を作っている重要な部分を、化学物質名で言いますとDNA、デオキシリボ核酸です。このデオキシリボ核酸という難しい名前の物質ですが、わずか4種類の文字しかありません。ある意味でわれわれの生命の設計図は非常に単純で、AかGかCかTかという遺伝暗号が、30億文字つながっています。この30億文字の遺伝暗号が図の22種類の常染色体と呼ばれている男女に共通して存在するものと、X染色体、Y染色体という、性、男性か女性かを決める染色体に分けて保管されています。
重要な点は、人はこの30億の遺伝文字によって人になることを運命付けられているけれども、みんな全く同じかというとそうではありません。皆さんと私を比べて、姿形が全て違うように、遺伝暗号が微妙に違います。この30億遺伝暗号文字のうち、300万ヶ所から1,000万ヶ所ぐらいは、個人間で違っています。わたしたちは、この個人個人で違っている遺伝暗号を基に病気を考え、病気の原因を見つけ、少しでもいい医療に応用しようと研究を組み立てております。 |
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このような遺伝暗号の違いを、「遺伝子の多様性」という呼び方をします。例えば、図に示すようにある部分にGのタイプの人とTのタイプの人がいるような遺伝暗号の違いが300万ヶ所から1,000万ヶ所存在します。このような遺伝暗号の1文字の違いを、横文字で言いますとSNP、スニップという呼び方をします。私たちの生命は、この遺伝暗号に基づいて営まれておりますから、遺伝暗号が違ってしまいますと、遺伝子の働きの質、あるいは量の違いに通じます。
それでは、遺伝暗号がこのように微妙に違うと、どういう影響を与えるのでしょうか。先程から述べておりますように、外見上の違い、あるいは100%遺伝子で決められているものではありませんけれども、性格の様々な違いも、遺伝子が微妙に影響します。それから、病気になりやすい、なりにくいというのもやはり遺伝子の暗号の違いが影響します。最近、SARSという病気がはやりましたけれども、ある研究者がSARSにかかりやすい、かかりにくいも、遺伝子のタイプが影響していることを報告しているように、たとえ感染症のような場合、つまりウィルスが入ってきたり、細菌が入ってきたりするような感染症の場合でも、症状の起こり方が遺伝暗号の違いによって左右されるとことが明らかになってきています。また、薬が効く、効かない、あるいは強い副作用が出る人も、やはり遺伝暗号の違いが微妙に影響していることが明らかになりつつあります。 |
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私たちはこのような遺伝暗号の違いが、様々な薬の反応の違いに影響することは、身をもって体験しているはずです。例えば、ある鎮痛剤が効きやすい、効きにくい、「わたしにはこの薬が合う」、というような経験があると思います。最も卑近な例で言いますと、お酒です。例えばこの会場に来られている方に、全員に無理矢理、例えばビールとかお酒をコップ1杯飲ませるとどういうことが起こるかでしょうか?全く平気な人、真っ赤になる人、あるいは、わずかコップ1杯のビールでも、気分が悪くなって嘔吐するような方がいると思います。
このような違いは、アルコールを分解したり、あるいはアルコールが体の中に入ってきたときにわれわれが受け止める反応の仕方が、遺伝暗号の違いによって異なっているからです。したがって、私たちは、アルコールを例にとるとよく解るように、いろんな物を食べたり飲んだりした時にいろんな特殊な反応を起こすということは知っています。そばアレルギーというのも、そばを食べただけで非常に強いアレルギーを起こされる方がおられますけれども、それもやはり持って生まれた遺伝暗号のどこかが微妙に違うからです。 |
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