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基調講演「ひとりひとりの体質に応じたオーダーメイド医療とバイオバンクジャパン」

拡大画像 このような言い方すると、全て遺伝子が決定しているという言い方に受け止められて誤解を与えがちですが、実際病気というものを考えると、必ずしも遺伝子だけではなくて、様々な環境の違いが影響を及ぼしていることは、皆さんご存知のとおりです。だから、病気になりやすい、なりにくいというという、持って生まれた遺伝暗号の微妙な違いと、その人の食べ物、あるいは置かれている環境などが、複合的に重なって、最終的にはわれわれはある病気に罹ってしまいます。
拡大画像 この遺伝暗号の違いと環境要因というものを別の角度からこの図のように説明できます。私は先程、われわれのゲノムというのは生命の設計図であるというふうに言いました。例えば家を作る場合、まず、設計図が作られます。その設計図がしっかりして、しっかりとした家が造られていれば、ある大きさの地震が来ても、びくともしません。ところが、同じ震度の地震であっても、壊れたり、あるいは大破したりするような家があります。これは、設計図のどこかにエラーがあって耐震強度が足りない場合に、同じ震度が来ても壊れてしまうような家があるからといえます。肥満になって、体重が100キロになった場合に、糖尿病になってしまう人もいるし、100キロの体重でも糖尿病にならない人もいるというのは、家の場合と同じように生命の設計図に微妙な違いがあり、われわれがどこまで耐えるのかという違いが決められているからです。遺伝子を比較しながら、最終的には根本的に設計図の差を見つけて、それを基に病気を改めて考える、あるいは今まで原因が分からない病気であっても、遺伝子の違いを通して見ることによって新たに原因を明らかにする、という形で研究を発展させたいと考えています。
拡大画像 一つ例を示します。免疫を抑える薬を飲んだ場合に、心臓に障害が起きる患者さんが一部おられます。どんな薬でも、非常に頻度の少ないものから頻度の多いものまで、副作用を起こすケースが認められます。私たちは、腎臓の移植を受けた後に免疫を抑える薬を服用され、そのあと心臓に非常に重い副作用が出た患者さんが、一体どのような遺伝暗号の特徴を持っているのかを調べました。
するとX遺伝子のある部位でGとCという違いが見つかりました。われわれは、お父さんとお母さんから同じ遺伝子を一組ずつ受け継ぎますので、一つの遺伝子について両親由来のものが二つあります。したがいまして、ある場所に両方ともGのタイプの遺伝子を受け継いだ人、GとCのタイプを受け継いだ人、CとCのタイプを受け継いだ人がいることになります。ご覧になって明らかなように、GGタイプとGCタイプは合計28人いますが1人も心臓に重い副作用を示しません。ところがCCタイプの人は合計44人のうち10人心臓に重い副作用がでていました。さらに調べていくうちに別のY遺伝子にも副作用との関係が見つかりました。この遺伝子の場合、CC型とCT型が合計30人おり、心臓に重い副作用を示した人いませんけれども、TT型の場合には42人中10人が強い副作用を示しました。この二つの遺伝子を組み合わせると、図のような分類になり、X遺伝子がCC型、かつY遺伝子がTT型の場合に3人に1人が重い副作用を心臓に示しました。ところが、それ以外の人は1人も副作用を起こしていないことが明らかになりました。
このような研究をどんどん発展させていけば、ある遺伝子のあるタイプを持った人にはある副作用が起きやすいことを、突き止めていくことができると思います。究極のゴールとしては、副作用をできる限り世の中から減らすというような医療の確立を考えています。
拡大画像 副作用というと、皆さん「自分には関係ない」というふうに思われているかもしれませんけれども、実は皆さんが飲んでおられる鎮痛剤、あるいは風邪薬などで、このような重い副作用を示す患者さんが日本に年間300人ぐらいおられます。これは、スティーブンス・ジョンソン症候群という名前が付いていますけど、風邪薬とか鎮痛剤、あるいは解熱剤を飲んだあとに、このような強い副作用を示すものです。見ると、まるで火傷のようですけども、実際これは火傷ではなくて、薬の副作用によって、このように皮膚が、まるで大きな火傷を負ったかのようにひどい症状を示すケースであり、私たちは遺伝子を突き止めていくことによって原因を突き止め、このような不幸な副作用を回避できると考えています。
拡大画像 私たちが目指している医療を、オーダーメード医療と呼んでいますが、今までの医療とどう違うのでしょうか?わかりやすく例えると今までの医療はワンサイズ、あるいはある特定のサイズしかない服を着せられているような医療といえます。ある診断がつくと、「じゃあ、この薬にしましょう」という形で、薬が与えられます。そうしますと、服のサイズにある程度限りがあると、ダボダボな人も、窮屈な人も、ぴったりな人もいるように、薬が効かなかったり、副作用が強い出た人がでてくるわけです。私たちは、遺伝子を調べていくことによって、多くの患者さんにぴったりした洋服を提供するような形で、副作用もなく、効果が期待できるような治療法を提供したいと考えています。遺伝子、ゲノムというキーワードによって、医療はこのようなレディーメード型からオーダーメード型に、まさに今大きな転換を遂げつつあるとご理解していただきたいのです。
拡大画像 この図は将来像を示したものですが、遺伝暗号の違いの情報をICカードに入れておく。それをそれぞれの方が持ち、病院を受診する際には病院へそれを持って行く。すると、お医者さんは薬を出すときに、コンピューターに薬の名前を打ち込むと、コンピューターが遺伝子に情報と比較して「この薬はあなたには危ないですよ」とか「この薬は避けたほうがいいです」「この薬は量を減らしたほうがいいです」というような警告をして、副作用を避ける医療を実現したいと考えております。
このような医療を実現するには、多くの患者さんに協力していただき、膨大なデータを蓄積しないとできないわけで、私どもが全国をこのような講演会を開く形で行脚して私たちが目指しているものを紹介している理由もここにあります。このプロジェクトは、われわれ研究者だけでできるものではありません、研究者とお医者さんだけが協力してもできるものでありません。患者さんとお医者さんと私たち研究者が三位一体で協力しない限り実現ができないものであり、逆に協力体制を整えることができれば、1日でも早くこのような医療を実現できるといえます。

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オーダーメイド医療実現化プロジェクト事務局
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