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基調講演「ひとりひとりの体質に応じたオーダーメイド医療とバイオバンクジャパン」

拡大画像 このような微妙な遺伝子の働きの違いが、がんの性質の違い、つまり薬が効きやすい、効きにくいを決めているのではないかと考え、先程のイレッサという薬を服用された患者さんに協力していただいて調べました。その結果、ある遺伝子の働きを調べると効いた患者さんでは赤か黄色の色合いを示し、効かなかった患者さんでは緑色を示した。つまり、効いた患者さんではある色を示し、効かなかった患者さんでは違う色を示したという答えを得ました。そのような遺伝子が幾つか見つかりました。
先程申し上げ忘れましたが、私たちのゲノムの中には、約3万5,000種類ぐらい遺伝子と呼ばれるものがあり、その遺伝子がタンパク質を作ります。したがって、遺伝子の働きを調べれば、どんなタンパク質がどれだけ作られているのかを調べることができるわけで、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん、Fさんと、薬の効いた方は赤か黄色の量でタンパク質が作られ、効かなかった方は緑色のレベルでしかタンパク質が作られなかったことになります。
拡大画像 このような遺伝子が幾つか見つかり、それらの遺伝子の働きをもとにそれぞれの患者さんのがんに点数につけてみました。そうすると、このような形で薬の効いた患者と、薬の効かなかった患者を色で区別ができ、それを点数化すると効いた方は100点満点になり、効かなかった患者さんは、マイナス50点より小さい点数を示しました。つまり、われわれが持っている遺伝子の中からある特定の遺伝子に的を絞って、遺伝子の働きを色で描き出して調べて、それを点数に変える仕組みを作ると、効いた人と効かなかった人をきれいにわけることができることが明らかになりました。
このような検査ができる薬はまだ限られています。しかし、この患者さんはなぜ抗がん剤が効くのか、この患者さんはなぜ効かなかったのかという謎が、遺伝子の情報、つまり生命の設計図を紐解くことによって、解き明かすことが可能になりつつあるわけです。実際、私たちはこのようなシステムを作ってから、4人の患者さんにテストをしました。その結果、プラスの点数であった方にはこの薬は効きましたし、マイナスであった3人の方には効きませんでした。まだ、数は少ないですが、4人とも点数と薬の効果が一致していたということで、患者さんの協力を得てさらに評価して、この検査を患者さんを治療をする際に応用したいと考えていますし、ほかの薬でも同じような検査ができあがりつつあります。
したがって、私が二十数年前に感じ、今まで全く手も足も出なかった、なぜこの人に薬が効くのか、この人に効かないのかという疑問、あるいはなぜある患者さんに特異的に強い副作用が出るのかという疑問が、解かれつつあるという状況を知っていただきたいと思います。このような成果を早く現場に還元しようと思えば、多くの患者さんの協力をいただきデータを積み重ねていく、その一言に尽きるわけであり、私たちは、患者さんの協力を得てこのような研究を進めていきたいと思っております。
拡大画像 では、どれだけの注意を払いながら、われわれがプロジェクトを進めているのかを紹介します。30万人の患者さんに対して、どのように協力を求め、個人の情報はどう管理しているかを説明します。
拡大画像 まず、患者さんの協力を得る際に、患者さんに研究内容を説明するメディカル・コーディネーターと呼んでいる方を育成しており、既に、4回の講習会を開催しております。協力していただいている病院から、看護師さん、薬剤師さんなどを派遣していただき、3日間あるいは4日間のコースで、プロジェクトの内容や患者さんにどう説明するのかを講義しています。
患者さんに協力を求める際に特に強調している点は、患者さんの自由意思に任せ、けっして強制をしないという点です。もし協力を断られても、絶対にそれによって嫌な顔をしたり、それで不満そうな顔はしないでくださいと。あくまでも協力していただける方の意思を尊重して、血液を採取してくださいということをお願いしております。それからもう一つ重要な点は、われわれが得られた情報を直接患者さん本人に返すということはしないことです。ある新しい医学的に重要な結果が得られた場合には、それを公開して、世界中どの患者さんでも同じような利益を得られるような形で利用する方針です。したがって、「個人個人には申し訳ありませんけど、お返ししません」ということをお伝えしています。個人の遺伝子情報保護を優先するためでもあります。当然ながら、あとで何か不安に感じて、「やっぱりいやだ」と同意を撤回される場合でも、すぐにサンプルを廃棄することにしてプロジェクトを進めています。
拡大画像 これは、様々なコンピューターの扱い方を教えている場面です。右下は、患者さん役やインフォームド・コンセントを取る役をお互いに演じながら、1日かけてロールプレイと呼んでいるトレーニングをしている場面です。
拡大画像 これは全体の流れを示したものですが、先ほど言いましたように、メディカル・コーディネーターが、まず患者さんとコンタクトし、患者さんの了解が得られれば血液を採り、個人の特定ができない形に暗号化し、医科学研究所の中のバイオバンクジャパンに集められます。バイオバンクに30万人の方のサンプルを集め、これを国内の協力機関、あるいは研究計画が妥当であれば企業の方にも提供して、それを利用して少しでもいい薬、少しでもいい診断法を開発していただこうと協力する方針にしています。この段階で多くの方が不安に感じられるかもしれませんが、次に個人情報はどう管理しているかを簡単に説明します。

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