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「目の前にあるオーダーメイド医療」

   
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では、このようなたった1文字の遺伝子の暗号で何か変わるのかということですが、これは言葉のお遊びですけども、たんぱく質を作る部分の遺伝暗号は、3文字で一つの意味を表します。ここに3つの暗号で1つの意味をなす言葉があります。「かれの、あおい、ひとみ」。この「あおい」の部分の1文字が変わるとどうなるか。「あおい」が1文字だけ変わることによって「あかい」瞳に変わります。このように、1文字変わっただけで全然違う意味、「青い瞳」が「赤い瞳」に変わってしまいます。
遺伝子でも同じことが起こっています。たった1文字の違いで、たんぱく質の性質が変わったり、たんぱく質の量が変わったりということが、体の中で起こってきます。ですので、先ほど非常に多くの違いがあると言いましたけども、その違いをもとに、たんぱく質の形とか量とかが、皆さんでわずかに違ってくる、そのうちのどれかが病気のかかりやすさ、薬の効きやすさ、副作用の出やすさにかかわっていると考えています。

   
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では実際に、わたしたちがどのようにして、病気や副作用にかかわる遺伝子の違いを見つけていくかという方法をお示しします。家がいっぱい並んでいます。ひとつひとつが遺伝子だと考えてください。実は、いっぱいいっぱいある、3万何千という遺伝子が、さっきの1冊の本に書かれています。ここの遺伝子のところに、ある病気にかかりやすい原因、もしくは副作用を起こす原因があるとします。
   
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ところが、今までの研究は、遺伝子の中でも表札のかかってる遺伝子だけ、つまり「大西という遺伝子とか、「中村」という遺伝子とか「田中」という遺伝子とか、「PAI-1」という遺伝子とか「ACE」という遺伝子しか見ませんでした。つまり、機能の分かっている遺伝子、どういうふうな働きをするのか分かっている遺伝子だけを対象として研究していたのです。
   
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でも皆さん考えていただきたいのですが、どこかに泥棒がいる。わざわざ、表札のあるとこに潜むよりも、表札のないところ、何かもう壊れてしまった工場とか、誰もいない家、表札のかかってないところにいるほうが多いかもしれません。
わたしたちの研究は、表札のかかっているところだけではなく、名前も分からない、表札もかかっていないような遺伝子も、すべて網羅的に解析をしていきましょうという研究です。今までは、表札のかかっているところしか研究しちゃだめですという研究者の方もいました。これは理屈に合いません。さっき言いましたように、表札がかかってないところの方が大事かもしれません。自分が知っているところだけ探すというのは、非常に無責任な話ですので、わたしたちはすべての遺伝子の部分について調べるという解析方法を取っています。
   
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実際にはすべての遺伝子を調べたいのですけども、今まで、従来の方法でそれをしようとしますと、患者さんから500ccとか、1リッター、牛乳パック1本分ぐらいの血液をいただかないと、その解析はできなかったのです。ところが、わたしたちは3年前に、7ccの血液(健診で採決する時に使う1本の採血管)から取り出したDNAという物質だけで、すべての遺伝子の範囲を検索できる方法を開発しました。
   
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これはその結果ですが、ひとつひとつの点が患者さん1人だと考えてください。これは約400人の患者さんの遺伝子の形を一度にGGタイプとか、GAタイプとか、AAタイプなどと調べる方法です。これでわたしたちは、1年間に1億5,000とか2億サンプルを解析することができます。しかし、方法だけ持っていても全然仕方がありません。そこで、今回多くの、30万人という患者さんの協力をいただいて、わたしどもの方法、すべての遺伝子を解析できる方法とタッグを組みまして、多くの遺伝子について調べていこうと思っております。
   
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実際、遺伝情報というものは、皆さん、特殊なものかというふうに考えてらっしゃるかもしれませんが、実は皆さん「血液型何ですか」というふうに聞かれたときに、もう簡単に、「わたしAですよ」「Bですよ」「Oですよ」と言われると思います。血液型というのは、遺伝子を測定しているわけではなく、たんぱく質を測定しているのですが、実は血液型というのは、明らかに遺伝情報なのです。
皆さんは、輸血を受けるときには、遺伝情報をきっちり明示するわけです。もう、当たり前のように血液型を言うわけです。遺伝情報なのに。それはなぜかと言うと、この遺伝情報が分かっていないと、大きな副作用、輸血などのときに、大きな副作用を起こすからなのです。ですので、遺伝情報を使うことすべてが悪ではないのです。実際に、多くの遺伝子の中にはもっと、これと同じように、知らないと何かが起こるという遺伝情報が絶対あるはずなのです。
それを調べていく、そういうデータベースを作っていく事が、わたしたちの仕事なのです。ですから、何でもかんでも遺伝情報を使ってしまえということを考えているわけでなく、このように、必ず必要な遺伝情報がどこかにあるはずなので、それに目をつぶっていないで探していこうというのが、わたしたちのプロジェクトです。
わずか10分の話ですが、少しでもわたしたち、見えにくい研究者が何をしたいか、何を目指しているかという事を、先ほど虫眼鏡で見ていましたけども、眼鏡をかければ見えるほどになっていただければ幸いと思います。どうもありがとうございました。

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