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基調講演「ひとりひとりの体質に応じたオーダーメイド医療とバイオバンクジャパン」

   
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これは私がずっと解決したいと思っている薬の副作用の一つです。一見、火傷と思われるかもしれませんが、病名で言いますと皮膚粘膜眼症候群あるいは中毒性表皮壊死症という、薬の副作用によって皮膚が死んでいく病気です。スティーブンス・ジョンソン症候群とも呼ばれていますが、このような非常に激烈な副作用を起こす患者さんが、日本国内に年間300人ぐらいおられます。
どんな薬が原因かと言いますと、ここにありますように抗生物質、解熱剤、風邪薬といった、みなさんがよくのまれているような薬です。いわばありふれた薬がこのようなとんでもない副作用を起すリスクを持っているわけです。
今まで私たちはこのような状況を、『残念ですが、体質ですから仕方がありませんね』、ということで済ましてきたわけですが、これからは、『残念でした』、ではなくて、このような副作用を起こす原因を科学的に明らかにして、不幸を避ける方向にもっていきたいと考えています。これは患者さんの協力がなければ成しえないことで、私たちは患者さんの協力によって、こういう現状を乗り越えるような素地を作りたいと考えています。

   
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病気に関して、少し話を変えます。
病気にかかりやすい、かかりにくいということに関して、先ほどエイズウィルスに対する感染を例に話をしましたが、私たちにはいろいろな遺伝的な違いがあります。また様々な環境要因の違いもあります。そのような複数の要因が重なって、その結果として遺伝子の働きに異常が生じ、われわれの体の調節が失われると、ここに書いてあるような、生活習慣病を主とする病気が発生します。
   
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遺伝的な強さや弱さは、家と設計図にたとえることができます。私たちの家は設計図に基づいて造られます。それぞれの設計図に従って3軒の家ができたとします。そこに震度6の地震がきたとしましょう。同じ時期に同じような場所にできたのに、まったくびくともしない家もあるし、ガタガタになる家もあるし、ちょっと壊れる家もある。なぜこういうことが起こるのかというと、設計図にミスがあって家のどこかに強度の足りないところがあれば、同じ震度6でも隣の家はびくともしないのに、その家は部分的に壊れてしまうということがありうるわけです。設計図にキズが多いと壊れる箇所も多くなります。
病気も同じで、ゲノムという生命の設計図に刻まれた病気の起こりやすさと、ストレス、さまざまな環境要因との組み合わせで発症に至ります。同じストレスにさらされても、ある人は平気だけれども、それによって病気が発生する人もいます。体重が80キロに増えて肥満になったとき、ある人は平気だけれども、ある人は糖尿病になってしまうというのは、家の場合と同じように、私たちの体の強さ、どこまで耐えられるかということに、元々私たちが持っている生命の設計図の微妙な違いが関係してくるからだ、ということがわかりつつあります。
私たちはこのような遺伝暗号の違いとある病気の起こりやすさを比較しながら病気の原因を解明して、治療法のないものには根本的な治療薬を作るための情報を提供したいと考えております。
   
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この図は将来像を示したものです。それぞれの方が、病院で受診なさる際に遺伝暗号の違いが入力されたカードを持っていく。そして医師は、診断に基づいて薬を処方しようとする時にこのカードを傍らのカードリーダーに入れ、処方しようとする薬の名前をコンピューターに入力すると、コンピューターがこの患者さんの情報と薬の情報を照らし合わせ、この患者さんには副作用が起こりやすいから量を減らしなさい、薬を変えなさいといった指示を出す、というような医療を作りたいと考えております。
   
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それから抗がん剤に関して一つ。抗がん剤も進歩しているということをご紹介します。
この写真、実はこの真ん中にいるのが私です。大阪の市立堺市民病院で外科医をしていたときのものです。私は阪大の医学部を卒業してからまるまる四年間は外科医として働いていました。一年間は大阪府立病院の特殊救急部というところにおりましたし、半年間は小豆島にある内海病院というところでも外科をやっておりました。
『なぜある段階になるとこんなに副作用の強い抗癌剤を使うしか道がないのか。ごく一部の人にしか効かないのに。こんなものは全然近代的な医療とはいえないのではないか。』 これは外科医としてがん患者を診療していたときの疑問です。何とかできないかということを思いながら研究を続けてきて、今ゲノム研究の成果を融合させることにより、その問題を解決できる手立てがあると思っております。
   
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抗がん剤の治療こそまさにレディメイドでありまして、がんがある程度進行しますと、もうほとんど選択肢がなく抗がん剤治療をすることになります。しかし抗がん剤は一部の人にしか効かないのです。『多くの人は副作用で苦しんだあげくに亡くなるだけだ、これではいけない』とずっと思いつづけ、この状況を打開すべく研究をしてきました。
   
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『Aさん、Bさん、Cさんのがんは見た目は同じでありながら、薬の効き方は全然違う。なぜだろう』という疑問を持ちながら研究を続けてまいりました。
三年半前に母親を大腸癌で亡くしましたが、その前に抗がん剤で治療するかどうかという場面に自分自身が置かれ、この問題は非常に重い問題だと改めて思いました。
患者さん、あるいは患者さんの家族が知りたいのは、ある治療法を受けるときに本人に効くのか効かないのか、ゼロか100かということであって、「これまでの結果からは20%の方には効きますがどうしますか?」というような問いかけをしても、言われたほうは非常に辛い、重い選択をしなければならない状態になります。大半の場合は苦しむだけでがんが治るわけではないという状況で、ある治療法を選択するかと迫られたときの患者さん、あるいは患者さんの家族の苦悩というのは非常に大きいものだということを、改めて認識いたしました。

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