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基調講演「ひとりひとりの体質に応じたオーダーメイド医療とバイオバンクジャパン」

   
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ただ今ご紹介にあずかりました、東京大学の中村です。本日はお忙しい中、沢山の方にお集まり頂きまして誠に有難うございます。このプロジェクトのリーダーとして、“私たちが何を目指しているのか?”“現状がどこまで進んでいるのか?”をご紹介させて頂きます。
本プロジェクトは、ここに示しておりますように、“文部科学省のリーディングプロジェクト”という形で、支援を受けている研究事業です。
   
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詳細につきましては、このホームページを通しましてご紹介しておりますので、興味のある方はこのホームページを通して更に詳しい情報を入手して頂ければと願っております。
   
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医療は、21世紀になって、今や大きな変換点を迎えようとしています。私たちが目指しているのは、まず1点目として、病気の原因の解明にあります。先程ご挨拶にもありましたように、まだ原因のわかっていない病気が沢山あります。病気を根本的に治そうと思えば、その原因を理解するところから始まります。理解するところから始まり、それから何年、何十年、かかるかもしれませんが、今は治せない病気を治すことができます。患者さんの協力を得て、原因もわからない、治療法もわからないような病気に対して、その答えを見出そうと、日夜努力しております。2点目は、病気の細かいことがわかると、それを通して新しい診断法、新しい治療法の開発に繋がります。最近、“エビデンスに基づく”という言葉がよく使われますが、エビデンス=“病気がなぜ起こるのか?”“症状がなぜ出るのか?”という事実でして、科学的な根拠に基づいて、薬の開発、新しい診断法の開発が、現在急速に行われつつあります。更に病気の詳しいことがわかれば、それら医療上有用な情報に従って、『オーダーメイド治療』を確立することが出来ます。『オーダーメイド治療』というのは、どういう治療か?に関しましては、これから詳細にご説明させて頂きますけども、今の医療というのは、ある程度“集団の医療”であります。例えば、“がん”、“糖尿病”、という診断がされますと画一的治療が行われます。しかし、それが本当に、患者さんの個々に合った医療であるかどうか、結果を見ないとわからない状況にあります。私たちは、ある治療を開始する前に、患者さんの個々にこの治療法が合うのかどうかを見極めて、“必ずこの薬は効く、そして副作用がない医療を確立したい”と考えております。それから、これはもっと先の話になるかもしれませんが、わが国は先進国の中でも極めて早く高齢化社会を迎えつつあります。ただ単に長生きをするのではなくて、病気にならずに健康で長生きすることが重要であります。その観点からは、病気を予防すること、病気の重症化を防ぐということが重要です。あれも駄目、これも駄目と言っていたら、なかなか出来ないのですが、“あなたはこういう病気になりやすいですよ”と分かれば、その方が、自分の生活に気をつけながら病気になるということを防ぐということも、可能になってくると思われます。私たちは、個人個人のリスク、危険性を遺伝子レベルで判定して、“ここに注意すればこういう病気のリスクが防げますよ”という形で遺伝子の情報を利用していけるような医療体系を作り上げたいと考えております。
本日のメインテーマは、『オーダーメイド医療』というテーマでありますので、“一体『オーダーメイド医療』とは、どういう医療であるのか?”と言ったことを、今から少しご紹介致します。
   
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私が、この『オーダーメイド医療』という言葉を使い始めてから、もう8年くらい経ちます。言い続けて参りましたけれども、こんなものは夢の治療法で、出来るわけがないという批判をよく耳にしました。しかしながら、この図はアメリカのFDA(薬の認可等を行っている役所)のホームページから取ってきたものですが、そこのニュースとして『オーダーメイド医療』、つまり“遺伝子の情報を用いて薬を使い分けしなさい”というガイダンスが昨年の11月に公表されました。まだ最終的なものは出来ておりませんけれども、このガイダンスの中には、今まで膨大なお金とリスクを伴っていた、薬の開発を効率的に行うことに、これらの情報は非常に役に立ちますと紹介されています。また、ある集団には薬が効くか効かないかは、あるいは、ある薬を飲むと副作用が出たりするようなことを科学的に明らかにするという観点から、遺伝子の情報は有用であり、これからは上手に遺伝子の情報を使いながら、薬を開発して行きなさい。“あるいは、”薬を使っていきなさい。を述べています。
従いまして『オーダーメイド医療』という言葉は、決して遠い将来ではなく、日々現実の問題としてとらえなければいけない医療になりつつあるということをご理解下さい。
   
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皆さん、先程の話にもありましたように、いろいろな薬を飲んだり投与されたりしていると思われますが、必ずしもある薬を飲めば全員に効くわけではありません。また一部の方には、非常に強い副作用を示すことがあります。現場は、今どういう形で対応をしているかというと、“ある病気になると薬を処方し、効かなかったらじゃあこっちにしましょう”“副作用が出たら量を減らしましょう”とか“この薬は止めるもしくは止めるようにしましょう”という形で、患者さんの様子を見ながら対応しているわけです。従って、結果を見てから“この薬が合わないからこっちにしましょう”“この薬はあなたにはきつくて副作用が出ますから止めましょう”という形で使い分けている。すなわち、使って見て、結果を見て、経験としてここに書いたように、薬の赤色とオレンジ色を白と青の薬に変えたり、量を増やしたり、あるいは種類を変えたり、という形で対応しています。結果として、こういうことをするのではなくて、あらかじめ、この薬は効きやすい、この薬は具合が悪いということが分かれば、より安全に、より効率的に薬を使うことが出来ます。特に、副作用の場合には、非常に重篤な副作用を示してしまえば、取り返しがつかないということも当然ありうるわけですから、あらかじめ副作用を回避することができるというような医療とは、患者さんにとって非常に重要であることは言うまでもありません。今や遺伝子の情報を使うことによって、副作用のリスクをある程度判定することが出来る時代になりつつある(全ての副作用が遺伝子で解決するわけではありませんけれども)ということをこれからお話申し上げます。
   
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よく“Xという薬とYという薬どちらが良いか?”ということが比較されます。ここで示したのは、ちょっとプロトコールと書いているので分かりにくいかもしれませんけれども、Xという薬とYという薬があるとします。Xを10人の患者さんに使うと2人に効きました。Yという薬があります、10人の患者さんにこれを出したところ、3人の方に効いて、7人には効かなかったとします。こういう状況が起こると、Yという薬がXの薬よりも良いですよ、という判定が今はなされています。集団としては正しいかもしれません。しかし、個人個人の患者さんにとって必ずしもYという薬が、Xという薬より良いとは言い切れません。

   
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もし、AからIさんまで10人いて、AさんとBさんには効いていたのが、Y薬ではAさんとBさんとCさんに効くようになったという状況であれば、YはXより優れているということが言えます。
   
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しかし、もしも患者さん10人が居て、Xという薬はAさんとBさんに効きました。Yという薬はCさんとDさんとEさんに効いた場合に、Yという薬がXという薬より必ずしも良いとは言えないわけです。すなわちAさんとBさんにとっては、本当は効いていた薬があったのに、薬が変わってしまった為に、効かなくなったということになります。例えば、抗がん剤があります。ある抗がん剤で治療を受けたとして、AさんとBさんは効いたとして、別の抗がん剤を使うとCさんとDさんとEさんに効いたという状況を想定すると、治療法を変えた為に、ある患者さんには良かったけれども、ある患者さんは薬を失ってしまうと言うことにもなりかねないわけです。今やある薬を使った場合に、どの人に効くのかということをわからないまま使って、ただ10人に2人と10人に3人を比べて3人の薬のほうが良いという判定をしていますけれども、これはある患者さんにとって不利益になる可能性もあります。

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