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基調講演「ひとりひとりの体質に応じたオーダーメイド医療とバイオバンクジャパン」

   
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がんで少し実例を紹介させて頂きます。例えば、抗がん剤の『オーダーメイド治療』と言うのはどういう事かを今からご説明致します。この写真を見ても何なのかがわからないかもしれませんけれども、実は真ん中に立っているのが私であります。20数年前、私はこういう形で外科医として、がん患者さんの手術に携わっておりました。いろいろなことが重なって、今は遺伝子の研究者になっておりますけども、元々私はここに示しているように外科医として、がん患者さんの診療に携わっておりました。その時に感じたことがあります。“何故ある抗がん剤はある人には効いて、ある人には効かないのか?”“何故ある人にはとんでもない副作用が出るのか?”と、そういう疑問を感じながら研究に携わって、今私が感じていた疑問に答えが出せる可能性があるという思いを持っております。
   
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がんの『オーダーメイド医療』という言葉を申し上げましたけども、当然ながらそれの対象となる言葉、対比される言葉としてがんのレディメイド治療という言葉があります。今まさに抗がん剤の治療は、レディメイドで行われております。ある状況になると、効くか効かないかは後で知ればいいという形で治療は行われています。がん患者さんがいて、進行すると“抗がん剤使いますか?”ということをお医者さんから聞かれます。お医者さんは“この薬はだいたい20%か30%の患者さんに効きます”ということを言うわけですけども、この20%・30%という数字は個々の患者さん、あるいは患者さんの家族にとってはほとんど意味がありません。私は4年前に母親を大腸がんで亡くしましたけども、その前に医師として同じような状況に幾度も遭遇して、医者として感じていた疑問を、今度は癌患者の息子として、結局やってみないとわからない治療というのは、患者さんにとって非常に酷な選択を迫ることになるのだということを痛切に感じました。多くの人が、副作用で苦しむだけなのに、その治療法しかすがる術がないと、これは科学的でも何でもなくて、21世紀になってまだこういうことをやっているというのは、やはり“医学は近代的な科学であるとは言えない”というふうに痛感しました。
   
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見た目は同じでも抗がん剤の、効き方はまったく違うのに、やってみないとわからないというような状況に、今私たちは置かれているわけです。果たしてこういう状況のままで良いのか否かというのが、20数年も前に私が感じた疑問です。今まで何らこの点は改良されることもなく、同じような形で患者さんに確率を示してどうしますかということを求めているわけです。
   
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そのような事ではなく、患者さんあるいは患者さんのご家族にとって見れば自分はこの薬を使えば効くのか効かないのかと言うことを、0か百に近い確率で知りたいわけです。私たちはその情報を提供する責任がありますし、今までは出来なかったけれどもこれからは出来る可能性を示していくことによって、やはり患者さんに対して個々に少しでも医療を提供したいと考えております。
   
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一例を示します。これはイレッサという最近開発された薬によって、劇的に改善を示した肺がん患者さんの例です。みなさんご覧になって明らかなように、この真っ白な胸がわずか14錠薬を飲んだ後で、このような形でまったく違う画像を示します。ちょっと見にくいかもしれませんけど、この真ん中に白い塊があってこれが“がん”で2週間後にはほとんど消えております。全員このようなパターンを示すのであれば問題はありませんけれども、現実的には1ヶ月の薬剤費が20数万円かかる上、30%の患者さんにしか有効ではありません。
   
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私たちは遺伝子の働きをこのように色で見て色でがんの性質(薬に効くか効かないか)を判定することを試みています。上は2人の大腸がん患者さん、真ん中にあるのが2人の脳腫瘍患者さんのがん細胞の性質を遺伝子の働きを色つけて見たものです。この2人の大腸がん患者さんの色合いが非常に似ていることがわかると思います。しかし、よく目を凝らすと、右下のようにパターンの違っているところがあります。これはこの2人の患者さんの内、色が同じ部分を真っ黒にして色が違っている部分を残したものが、この右下の図です。2つの赤がこちらでは黄色になっていますし、ここの赤色がここの黄色になっています。遠くの方はご覧になりにくいかもしれませんけれども、色合いが微妙に違います。色が違っているということは、遺伝子の働きの違いを示しているわけで、この微妙な遺伝子の働きの違いが、がん患者さんのがん細胞の性質の違い、つまり薬が効いている、効いていないということに影響を及ぼしているのではないかということで徹底的に調べてみると、このような遺伝子が見つかりました。
   
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ある薬に効いた患者さんでは、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん、ここで見ますと、赤か黄色を示しています。効かなかった患者さん、Xさん、Yさん、Zさんは緑色を示しています。すなわち、効いた人と効かない人では遺伝子の働きのレベルが違うことが見つかりました。遺伝子Yというのは、逆のパターンになります。緑か黄色なのに効かなかった人は赤色というのを示しています。つまりは、薬の効果に関係するような遺伝子が浮かび上がってきたわけです。私たちは、今それを使ってこのような遺伝子の働きを点数にするというシステムを作り上げました。

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