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透析患者から見たオーダーメイド医療に対する期待

   
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皆さんがよく知っている腎臓の機能は水分や老廃物を除去して尿を作り出すことだと思いますが、腎臓はそれ以外にも、体のバランスを整えたり、血圧を調節したり、血を造りだすホルモンを分泌したり、骨の形成に関わったり、と多くの仕事をしています。
これに対して、透析は水分と老廃物の除去が主な仕事で、しかも腎臓が24時間365日動き続けているのに対して、透析は1回4時間から5時間の週3回だけしか行いません。透析の機能は、その質・量ともに腎臓には到底及ぶべくもないわけです。
つまり、透析は腎臓の機能を一部代替するに過ぎませんので、体調を維持・管理していくためには、体に入ってくる食事を制限したり、薬の力を借りることになります。
食事では、水分の制限から始まり、塩分やカリウム、リンの取り過ぎに十分注意しなければいけません。果物には、たくさんのカリウムが含まれていますが、ある果物が大好きな透析患者が、ついつい食べ過ぎてしまって、透析を受ける直前に心臓が止まって急死されたことがありました。
薬も、血圧の薬から、貧血を改善する薬、カリウムやリンが体に溜まらないようにする薬など、多くの薬が必要となります。
このように透析患者は、透析と食事療法や薬物療法を併せることによって生きることができるわけですが、腎臓に比べて不完全な透析による合併症の問題や、食事や薬の問題、そしてこうしたことからくるQOL(生活の質)の問題が透析患者にとっては大変深刻な問題です。
   
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こうした透析患者にとって、遺伝子レベルでのオーダーメイド医療が実現されていく過程で、こんな医療が実現されたらすばらしい、と思えるものを薬を中心にお話したいと思います。
透析の性能は昔に比べて飛躍的に向上しましたが、健康な腎臓に比べれば、まだまだ除去しきれない物質がたくさんあります。こうした取りきれない物質が長期的に体に蓄積されていって、さまざまな合併症を引き起こします。そこで、透析では除去が難しい物質を薬によって除去したり、体に害のないものに変化させることができるようになれば、透析患者の体調は大幅に改善し、長期的な合併症も予防できるようになるかもしれません。
また、食事の制限は透析患者にとって、何よりもつらいものです。この制限が緩和されれば、食事に関する大きなストレスはだいぶ少なくなると思います。たとえば、水分を普通にとっても、自分の体にとって余分な水分は腸から体に吸収されることなく便として排出してしまうような薬ができれば、すばらしいことです。カリウム、リン等についても、そうした機能を持つ薬は既にありますが、もっと強力な薬がほしいというのが透析患者の強い願いです。食事管理の補助としてのこうした薬は透析患者だけでなく、透析患者よりももっと過酷な食事制限が必要となる透析導入前の保存期の患者さんにとっても大きな福音になると思います。
透析が長期に及ぶことによって、さまざまな合併症が出てきます。その合併症の出方はその人の透析に至るようになった原疾患の違いや体質の違い、透析の内容、生活管理の仕方によって人それぞれです。その人の体質や症状、ライフスタイルにあった副作用の少ない最適な薬が開発されれば、合併症の治療・予防に対して絶大な効果を発揮すると思います。
ここに挙げてきたような薬ができれば、全ての透析患者がその服用を望むと思います。その薬によって体調が改善され、ストレスが減ることによって、透析患者のQOLが大幅に向上して社会参加が促進されることは間違いありません。
   
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腎疾患は、この絵が示しますように慢性化して、腎機能が1/2以下になると腎不全と呼ばれ、1/10ぐらいになると透析が必要になります。腎不全まで腎機能が悪化すると、遅かれ早かれ透析に至るのが現状です。私の場合、10歳のとき急性腎炎になって回復しましたが、36歳のときに急に腎機能が悪化して腎不全となり、39歳で透析導入となりました。もし、透析がなければ、私は39歳で死んでいたわけですので、透析を初めて行った日は今では「第2の誕生日」として私にとっては特別な日になっています。
現在日本で透析を受けている人は約23万人、毎年1万人ずつ増加しており、導入理由の第1位が糖尿病になっています。透析医療に関わる医療費は1兆円を超えています。
これまで、ここの透析期の話をしてきましたが、腎疾患全体とオーダーメイド医療に関してお話したいと思います。
透析患者は23万人というお話をしましたが、まだ透析には至っていないが、将来透析の可能性がある腎不全予備軍、透析予備軍はその何倍もいると言われています。特に糖尿病が国民病と言われるようになっている今、こうした予備軍の人たちに必要な治療を施して透析に至らないようにすることが、国民医療費や社会福祉の観点からも非常に重要であると思います。
また、私たち透析患者は、その透析を受けることの大変さと透析を受けるに至った自分の生活への反省から、予備軍の人たちが誰も透析にならずにすめば、という強い気持ちがあります。
オーダーメイド医療が実現していく中で、腎炎が慢性化しても腎不全にならないように治療がなされ、やがて治癒が可能となり、腎不全になっても腎機能の悪化を食い止めて透析にならないようにすることができれば、どんなにすばらしいことでしょう。そうなったときは、もしかしたら「透析治療は過去の治療」と言えるようになるかもしれません。
このことは、日本のように誰もが透析治療を受けることができる国と違って、末期腎不全になってしまったら、死なざるを得ない世界中の多くの腎疾患患者が待ち望む形であり、私たち腎疾患患者の将来の夢でもあります。
   
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今までお話してきましたように、オーダーメイド医療が実現すれば、私たち患者にとって、悩みであり苦しみである症状が軽くなり体調が良くなる、そして今まで治らないと言われてきた病気が治るということさえ期待できるようになります。
透析患者にとっては、透析からの離脱は無理としても、オーダーメイドな薬ができることによって、体調をもっと上手に管理できるようになり、透析に伴う合併症を治療したり、事前に予防できるようになるかもしれません。また、透析導入前の腎疾患患者にとっては、透析を一生しないで済む治療が確立される可能性もあるのではないでしょうか。
こうした自分に合った最適なオーダーメイドな医療が提供されるようになれば、私たち患者は確かな希望を持って自ら主体的に病気に立ち向かうことができるようになります。「この治療は自分に合っているのだろうか」、「こんな治療で、どこまで体調を保てるのだろうか」と常に不安と迷いの中にあるのが、自分の遺伝子情報に基づいた、自分にとって最適な医療を受けることができるようになるのですから、私たちは本当に希望を持って病気に向き合うことができるようになると思います。
こうしたことは、自分の体調管理や病気にならないように事前に生活を管理する意識の高まりや行動に繋がっていくことも確実だと思います。
プロジェクトの先生方もおっしゃっているように、「オーダーメイド医療は患者本位の医療」であり、その恩恵は私たち患者に一番注がれるわけですから、私たち患者がまず何よりも、オーダーメイド医療の意義と目的を正しく理解して、その実現のために多いに協力していかなければいけない、協力していきたいと思っています。
私も、できるだけ多くの透析患者、腎疾患患者がこのプロジェクトの存在を知り、協力していくことができるように、「患者としてできること」をしていきたいと考えています。
以上、オーダーメイド医療に対する透析患者としての期待を述べさせていただきました。ご清聴、どうもありがとうございました。

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