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◆ゲノム多様性プロジェクト

 われわれは、日本人集団において遺伝子のどの部分に遺伝暗号の違いがあるかを探すプロジェクトをスタートした。既に欧米では1年ほど早く先行しているので、われわれは遺伝子の部分に特化して遺伝暗号の違っている領域をスクリーニングする戦略をとり、プロモーター領域、エクソン領域、イントロン領域という形を中心にスニップの解析を行った。合計1億1,410万塩基対の領域に関して24人分のDNAシークエンスを行った。合計23億塩基対のDNAシークエンスを2年間の間に実施して、20万カ所遺伝暗号が違っている場所を見つけた。さらに、薬の使い分けというのは非常に重要な課題であるで、薬剤代謝関連遺伝子、あるいは薬剤のトランスポーターなどに関する遺伝子多型を7,800カ所同定し合計21万カ所のスニップを同定した。当初の計画は、15万カ所の遺伝子多型を見つけるということであったが、2年間の間に目標を上回る21万カ所のスニップを見つけてプロジェクトを終えた。
 このプロジェクトについては、欧米で既に行われているから必要ないというような批判があったが、結果的にわれわれは遺伝子領域のスニップの研究において世界に一歩先んじることができたと考えている。このスニップの情報というのは、スニップデータベースを医科研と科学技術振興事業団の間でジョイントでつくり上げ、現在既に20万件のスニップ情報が登録されている。
 もう一つ非常に重要なのは、どのタイプが何%というアレリック・フリークエンスという情報もこのデータベースには掲載されている。これは世界で最も規模の大きいアレル頻度データベースになっている。
 さらにもう一点われわれが世界に先んじているのは、このスニップの情報を解析するスピードである。multiplex PCRとインベーダー法というのをカップルさせた独自の方法をつくり上げ、1スニップの解析にわずか0.1ナノグラムのゲノムDNAしか使わないという方法を樹立した。世間一般ではまだ10ナノグラムとか50ナノグラムという非常に多い量のDNAを使ってスニップの解析をやっているために、ゲノム全体を調べるには患者の血液が何リットル必要だとか、またセルライン化しないといけないというようなことを言っている人もいる。しかし、1スニップ0.1ナノグラムであればわずか10mlの血液で、100万カ所ぐらいのスニップの判定が可能である。したがって患者の血液を何リットルも消費することはなく、わざわざ細胞株をつくってそれを準備してからゲノム全体のスニップ解析を進めなければいけないということにはならない。この技術的な進歩というのは非常に大きくて、最近進めているプロジェクトでは患者さんに7CCの血液を提供してくださいとお願いしているが、それでも十分ゲノム全体にわたって100万カ所のスニップの解析情報を入手することが可能で、それをもとに疾患に関係する遺伝子がどこかに潜んでおれば必ず見つけられるというレベルまで技術的に来ている。
 それからもう一つ大事なポイントは早さである。現在理化学研究所の中にセットアップされた設備では、年間1.3億スニップタイピングが可能である。これは1人に対して1億3,000万カ所という意味ではなく、何人掛ける何カ所のスニップの掛け算で1.3億を調べることができるということで、9月にはこれが3億まで跳ね上がる。この数字は世界的に見ても圧倒的に高い数字であり、スニップの質、それからスニップを解析する技術に関して、われわれは世界の先頭を切って走っているわけである。これに瀬在総長を始め日本大学の方々にも協力をいただいているが、患者さんのサンプルをたくさん集めることによってますます疾患遺伝子研究を加速度的に進めていくことが可能になってきている。

 理化学研究所の中にセットされたタイピング支援チームの中のタイピング・ファシリティにはPCRの機械だけでも部屋には100台以上あり、ここにさまざまなロボットを組み合わせてたくさんのスニップ解析を行っている。現在1日に54万スニップタイピングが可能で、年間では1.3億スニップタイピングとなる。これまでに10万8,000カ所のスニップを解析し、約9万カ所に関してデータをとっている。これだけでも約1.2億スニップタイピングをおこなっていることになる。それ以外にもミレニアムプロジェクトとして行われている糖尿病や高血圧やぜんそくのチームのサポートとして6万のスニップの解析を行っている。
 半年ほど前の状況ではNCBIに登録されていたアレル頻度の情報の伴っているスニップは13万6,900カ所しかなかった。このうちわれわれが貢献していた分はこの時点で6万で44%である。決して日本はゲノムの分野で遅れているというわけではなくて、このスニップの分野に関しては世界でナンバーワンの国であるという認識が必要である。これを利用することによってわれわれは疾患に関係する遺伝子、あるいは薬の副作用や薬の作用に関係する遺伝子をスクリーニングすることが可能であって、それを先進国の中で先駆けて患者さんに還元するということは十分可能なわけである。
 さらにこのスニップの情報を利用した国際ハプロタイプ計画というのが昨年度の10月に発足した。会議で決まった各国の分担は、カナダが10%、中国が10%、日本が25.1%、イギリスが24%、アメリカが30.9%である。日本はアメリカに次いで、わずかな差で2位である。ところがアメリカ国内では、4カ所のセンターに分かれており、10%が最も多いところであるので、理化学研究所の多型センターは単一グループとしては世界最大の貢献をするという状況になっており、4分の1が理化学研究所の遺伝子多型研究センターにおいてデータが算出されるということである。この分野を通してもわれわれは国際貢献を十分に担っていると自負できる。
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