バイオバンク通信 研究成果早見版 1/2

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シンポジウム報告1
バイオバンク・ジャパンの全貌-その可能性と未来-

日時:2011年10月2日 (日)
講演:門脇 孝さん(東京大学医学部)
玉腰暁子さん(愛知医科大学)
増井 徹さん(医薬基盤研究所)
久保充明プロジェクトリーダー(理化学研究所)
司会:青野由利さん(毎日新聞社)
会場:東京・一橋記念講堂

 日本のバイオバンクの未来について検討するシンポジウムが開催されました。254名に参加いただき、4人の専門家による講演と、パネルディスカッションが行われました。

 講演では、2型糖尿病をはじめとして、これまで見つかった病気の遺伝子型の機能解析についての紹介がありました。このような研究をさらに進めることで、今後、新たな治療薬の開発やバイオマーカーの開発、そして、個人の遺伝的リスク検査の実現という波及効果につながるという展望が示されました。ただ、現段階では、まだ遺伝的なリスクが高いか低いかという程度しかわからないので、患者さんを長期的に追跡することで、そのリスクが本当に病気の発症につながる可能性があるかを解明していくことが重要だという指摘もありました。

 また、バイオバンク・ジャパンに現在集まっているデータは、日本人の患者さん全体の2~3%に値するものであり、その特徴を精査しても、日本の患者さんの全体像を反映する集団とみなしてよい内容だという意見がありました。バイオバンク・ジャパンのさらなる発展のためには、日本のみならず国際的な研究基盤として位置付けられるようにすべきだという方向性が確認されました。

 

シンポジウム報告2
患者が支えるバイオバンクとその未来

日時:2011年11月13日 (日)
講演:アリス・ウェクスラーさん
(Alice Wexler,アメリカ・遺伝病財団理事)
シャロン・テリーさん
(Sharon Terry,アメリカ・ジェネティック・アライアンス代表)
司会:武藤香織 准教授(東京大学医科学研究所)
会場:東京大学医科学研究所・講堂

アリス・ウェクスラーさん

シャロン・テリーさん

 アメリカから、遺伝病財団(Hereditary Disease Foundation)のアリス・ウェクスラー理事とジェネティック・アライアンス(Genetic Alliance)のシャロン・テリー代表を招き、講演会が開催され、63名に参加いただきました。

 アリスさんは、母親がハンチントン病患者であることをきっかけに、父親と研究推進のための財団を設立しました。この財団は、ハンチントン病の研究をしてくれる研究者を増やすために研究助成資金を集めてきました。さらに、研究者たちの議論の場に患者・家族も参加できるようにし、対話を深めることにも力を注いできました。その成果として、大規模な遺伝子解析研究が実現し、ハンチントン病の遺伝子発見に結びつきました。設立から40年以上たった今も、若手研究者の研究や治療薬の承認を支援する活動が続けられています。

 シャロンさんは、二人のお子さんがPXE(弾性線維性仮性黄色腫)と診断されたことをきっかけに、夫のパトリックさんと患者団体を立ち上げ、現在は、遺伝性疾患や先天性障害など1,000団体以上の当事者団体のネットワークを運営されています。シャロンさんらは、希少疾患の研究をするには生体試料の収集が大変であることに着目して、患者から生体試料を提供してもらい、研究者に配分するバイオバンクを設立しました。バイオバンクでは、患者から得られた血液、組織、臨床データを管理し、承認を受けた研究施設に配布しています。

 日本、韓国、台湾の稀少難病支援団体の代表も出席され、アメリカの取り組みを学ぶとともに、会場全体で患者とバイオバンクの関わり方について、活発に議論を展開しました。




上段左から立命館大学の松原洋子さん、韓国希少・難病疾患連合会のシン・ヒョンミン会長、中段左から台湾TFRDの陳冠如(チン・クァンル)副事務局長、難病研究資源バンクの増井徹さん、下段左から希少難病患者支援事務局の加賀俊裕さん、ジェネティック・アライアンスのパトリック・テリーさん


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