バイオバンク通信第12号 1/4

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インタビュー

患者さんの期待に応えられるように
最善を尽くしていきたい

新プロジェクトリーダーに聞く(下) ―久保充明さん

新プロジェクトリーダー 久保充明さん
 

研究者になられた背景について教えてください。

 元々、人と話すことが大好きで、「人を相手にした仕事がしたい」とずっと思っていました。通っていた中学では、医学部を目指す同級生が多くて、その影響もありましたが、やっぱり患者さんと接することのできる医者は魅力的でしたね。医者になって専門を決める時には、人の全体像を見たいと思っていたので、内科が自分の性格に合うと思い、内科医になりました。

 医者になってから長く腎臓内科にいましたが、ご縁があって、1995年から福岡県久山町で続いている疫学研究(久山町研究*)に加わり、その後、2003年からは東大医科研の中村研究室で研究を続けてきました。

 研究を続ける最大の理由は、自分が外来診療で患者さんからの質問に答える時に、きちんとした裏付けのあるデータで説明したいという気持ちがあるからです。たとえば、患者さんから「自分の病気は遺伝するのか」と聞かれた時、研究データを踏まえて遺伝の影響はどのくらいあるのかを説明できるようになりたいと思っています。

休日はどのように過ごされますか?

 基本的に休日は、家族との時間を大事にしています。日曜日は、妻の買い物に付き合うか、8才の息子とキャッチボールやベイブレードで遊んでいます。あと、年に4、5回、家族旅行を楽しんでいます。去年の夏は、北海道を1週間で回ってきました。また、実家が九州にあるので、宮崎の海で泳いで、阿蘇に寄って、湯布院温泉に泊まったりもしています。充実した休日を過ごすことで日常の研究生活にもメリハリが出て研究もはかどります。

新プロジェクトリーダーとしての抱負を教えてください。

 前プロジェクトリーダーの中村先生が築いて来られた、「オーダーメイド医療を実現する」という方針は変わりません。近い将来に医療現場に返せるような成果を挙げていきたいと思っています。当面の目標は、患者さんの遺伝子型を調べることにより、疾患に関する個人個人のリスクを予測し、それに見合う治療方法や薬剤を選択するための基盤となるデータベースをつくることです。

薬剤と遺伝情報に関する臨床研究がはじまるとお聞きしていますが。

 はい。いよいよこのプロジェクトの成果をもとにした臨床研究をスタートさせます。カルバマゼピン(てんかんなど)、ワルファリン(血栓塞栓症)、タモキシフェン(乳がん)という3つの薬剤に関して、ある特定の遺伝情報が、これらの薬の投与量や薬疹の起きやすさと深く関連がありそうだということがわかってきました。そこで、これらの薬を新たに飲み始める患者さんの協力を募り、遺伝子の検査をさせていただき、薬剤投与のあり方が効果的かつ安全かどうかを確認する研究を始めます。今は、全力を尽くしてこの研究を開始するための準備をしています。

患者さんへのメッセージ

 第1期からご協力いただいている20万人の患者さんには感謝の言葉しかありません。研究が実際の医療として実現するまでに、まだ時間はかかりますが、患者さんのご期待に添えるように、最善を尽くしていきます。引き続きご協力の程、よろしくお願いいたします。

*久山町研究とは?

1961年から、福岡市久山町(人口約8,000人)の住民を対象に脳卒中、心血管疾患などの疫学調査を行っている。この研究は、日本の死亡統計の信憑性に対する疑問から出発しており、日本人の脳卒中の実態解明を目的として始まった。最近では、遺伝子解析によるゲノム疫学にもテーマが広がり、従来の環境因子に、遺伝子解析(SNPs)を加えた生活習慣病のゲノム疫学が開始され、一定の成果をあげている。(久山町研究ホームページhttp://www.envmed.med.kyushu-u.ac.jp/about/index.htmlを参照)

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