バイオバンク通信第14号 2/4

バイオバンク通信

血清を利用してどんな研究ができるの?

 「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」では、病気や薬の効果・副作用と遺伝子やタンパク質の関係を調べる研究に同意された方に、年に1回、採血にご協力をいただいています。提供された血液から、血清が分けて取られ、バイオバンクジャパンで保管され、研究に用いられています。

血清倉庫
血清倉庫

血清の研究とバイオマーカー

 血清の研究では、血清中のタンパク質を網羅的に解析して、バイオマーカーの探索を行っています。バイオマーカーとは、血液や尿、組織などに含まれる物質で、生体内の状態を示す指標となるものです。コレステロール値やHbA1c(ヘモグロビンA1c)、前立腺がんのPSA値などがバイオマーカーの一つであり、病気の診断や病状、治療の効果などを測るために用いられています。新たなバイオマーカーを発見し、さらに臨床場面に応用すること(実用化)によって、病気の早期診断やより効率的な検査方法・治療法の確立が期待されます。

バイオマーカーの探索から実用化まで

* 「抗体」とは、自分の体内にないタンパク質(抗原)が生物の体に入ってきた場合に対応して作られるタンパク質の一種のことです。それぞれの抗体はただ1つの抗原にのみ反応する性質をもっています。

バイオマーカーの探索から実用化まで

 タンパク質の構造や機能を対象とした研究は、「プロテオミクス」または「プロテオーム解析」と呼ばれています。具体的な研究方法は、まず血清などの生体由来の物質に含まれるタンパク質の種類や質量を質量分析器などを使って網羅的に解析します。その結果について、ある病気にかかっている人とかかっていない人、また、ある病気にかかっている人の診断前後を比較して、病気によって特異的に変化しているタンパク質を見つけます。これがバイオマーカーの候補となります。発見されたバイオマーカーの候補は、右の図のように研究が進められ、政府の認可が得られると実用化されます。

 ゲノムがほぼ一生変わらないのに対して、タンパク質は同一の個人においても組織や時間によって変化します。そのため、同一の個人から、異なる時期に採取された血清、ある疾患と診断される前後の血清を解析することがとても有用です。本プロジェクトでは、皆様から年に1回採血にご協力いただき、カルテの情報、初回にご提供頂いたDNAと合わせて、血清の研究を進めています。

 タンパク質の研究は、タンパク質の種類が多様で情報量が多いため、研究の成果が実用化されるまでに時間がかかりますが、ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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