バイオバンク通信第15号 1/3

バイオバンク通信

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プロジェクト概要紹介

「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」
第3期が始動しました!

プロジェクトリーダー 久保充明(くぼ・みちあき)
1988年九州大学医学部卒業。松山赤十字病院腎センターなどを経て、1995年より疫学研究(久山町研究)に従事。2003年東京大学医科学研究所・客員研究員。2006年より理化学研究所。現在、理化学研究所統合生命医科学研究センター・副センター長。

プロジェクトリーダー 久保充明さん
 

「オーダーメイド医療実現化 プロジェクト」って何?

わたしたちは、文部科学省の委託事業として、2003年から「ひとりひとりに合った治療」をめざし、個人の体質(遺伝情報の違い)と、病気のかかりやすさ・くすりの効きやすさ・副作用の出やすさの関係について研究を行っています。

これまでどんな研究成果があったの?

 プロジェクトの第1・2期を通じて47疾患を対象に、20万人の患者さんのご協力をいただき、世界最大規模のバイオバンク・ジャパン(DNA・血清バンク)を構築しました。このバイオバンク・ジャパンに、患者さんからご提供いただいたDNAやカルテ情報などを大切に保管しています。ご提供いただいた試料を用いて研究を進めてきた結果、病気やくすりに関連する遺伝子を263個発見しました。これらの研究成果は、国際的な学術誌に200本以上の論文として掲載され、日本人を対象とした遺伝子型と病気に関する基礎研究の約7割を占めています。

第3期でめざす研究とは?

 第3期では、第1・2期の10年間で積みあげてきた研究成果をさらに進展させるために、2013年から5年間の計画で、2つの研究を同時に行います。ひとつは、第1・2期にご提供いただきましたDNA・血清・カルテ情報などを引き続き利活用するとともに、患者さんの健康状態を追跡調査することで、データをより正確なものにしていきます。もうひとつは、新たに、38疾患を対象に、患者さん10万人からDNA・生活習慣の情報・カルテ情報などをご提供いただき、研究を進めていきます。病気のかかりやすさ・くすりの効きやすさ・副作用の出やすさに関連する遺伝子を新たに発見していくことで、オーダーメイド医療をより確実に早く実現することをめざしています。

第3期はここが違う!

 第3期では、これまでの研究に加えて、最新の解析技術の導入、日本のゲノム研究を発展させるための学術研究データベースへの登録、そして、共同研究を推進します。ゲノムの解析技術は、日々進歩しています。従来のSNP解析(個人の一塩基の違いを読み解く分析)を含む、最新の全ゲノム解析(遺伝情報を全て細かく読み解く分析)を進めていきます。ゲノム研究をさらに発展させるためには、患者さんからご提供いただきました貴重な試料などを有効に活用していくことが大事です。ご提供いただいたDNAやデータの一部は、個人が特定されることのないように厳重に匿名化を行ったうえで、学術研究データベースに登録する予定です。また、効率よく研究を進めていくために、中核研究機関で厳格な審査をしたうえで、外部の研究機関に試料を配布します。将来的には、同じような目標をもつ国内の他の研究プロジェクトと協力・連携して、一日も早く医療に役立てられるように努めていきたいと考えています。

オーダーメイド医療の実現へ向けて!

 このプロジェクトは、多くの患者さんや医療機関の方々に支えられ、病気のなりやすさやくすりの効果・副作用に関する遺伝的な体質を数多く見つけてきました。しかし、これらの成果を実際の医療や病気の予防につなげるためには、さらに多くの患者さんのゲノムと病気の関係を調べる必要があります。個人の体質に合わせたより適切な医療や予防を実現するために、全力を尽くしてまいります。これまでご協力いただいた皆様に、あらためて御礼申し上げますとともに、今後ともご支援ご協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

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