バイオバンク通信第15号 2/3

バイオバンク通信

研究成果のご紹介

皆様のご協力により新しく研究成果がでました

2012/9/14
血液中のMICA及びMICA遺伝子がB型肝臓がんのリスクや予後と関連

 日本人における肝臓がんのうち、約70%がC型肝炎ウイルス、約20%がB型肝炎ウイルス、残り10%がアルコール性肝障害や非アルコール性脂肪性肝炎によるものです。オーダーメイド医療実現化プロジェクトの成果によって、MICA遺伝子がC型肝臓がんのリスク遺伝子であることが2010年に明らかとなりましたが、MICA遺伝子の他の肝臓がんにおける役割は不明でした。そこでB型肝臓がん407名、健常者5657名を調べた結果、MICA遺伝子がB型肝臓がんのリスク遺伝子であること、また血中のMICAが高い方は予後が悪いことがわかりました。今回の成果をもとに、MICAを標的とした薬の開発を目指して共同研究を進めています。
■ 『PLoS ONE』オンライン版掲載

2012/9/25
日本人集団における喫煙量とCYP2A6遺伝子との関連性を発見

 喫煙はさまざまな病気との因果関係が報告されていますが、喫煙量と遺伝的要因との関連は完全には解明されていません。そこで、ゲノムワイド関連解析の手法を用いて、日本人2万人以上の1日の平均喫煙量と染色体上に高頻度に存在する欠失およびSNP(スニップ、一塩基多型)との関連を調べました。その結果、日本人においては、CYP2A6遺伝子に存在する欠失と、ある部分のSNPの組み合わせが、喫煙量の違いや肺がん、慢性閉塞性肺疾患のなりやすさと関連していることがわかりました。今回発見されたCYP2A6遺伝子の文字の違いは、喫煙量を増加させ、タバコと関係が深い疾患のリスクを上昇させることが示唆されました。
■ 『PLoS ONE』オンライン版掲載

2012/10/7
日本人アトピー性皮膚炎発症に関連する8つのゲノム領域を発見

 アトピー性皮膚炎は、アレルギー反応が関与する、皮膚過敏やかゆみが特徴的な皮膚の慢性炎症です。約60万個のSNP(スニップ、一塩基多型)についてゲノムワイド関連解析を行い、アトピー性皮膚炎の発症と関連しているSNPを探索しました。その結果、8つのゲノム領域が日本人のアトピー性皮膚炎のかかりやすさに強く関連していることがわかりました。これらのゲノム領域には、アレルギー炎症との関連が示唆される遺伝子群が数多く含まれており、気管支喘息と共通の疾患関連領域も見つかりました。今回の発見は、臨床研究での仮説立案や治療標的分子の絞り込みに役立つと期待されます。
■『Nature Genetics』オンライン版掲載

2012/10/10
日本人のための前立腺がんリスク診断法を開発

 前立腺がんは、世界で最も発症頻度の高いがんのひとつで、日本でも食生活の欧米化や超高齢化に伴い急増しています。現在、PSA検査(血液中の前立腺に特異的なタンパク質の値を測定)が広く普及されていますが、この方法では、PSAの値が軽度高い場合にがんが発見されるのは20%程度です。そこで、日本人の前立腺がんとの関連が証明された16種類のSNPを組み合わせて、日本人のための前立腺がん発症リスク診断を開発しました。この方法を用いればより効率的に前立腺がんを見つけられる可能性があります。したがって、従来のPSA検査とSNP検査を有効に活用すれば前立腺がん検診をより効率的に運用できると期待できます。
■『PLoS ONE』オンライン版掲載

2012/12/23
国際共同研究により高尿酸血症に関連する18の新たな遺伝子領域を発見

 高尿酸血症とは、血液中に含まれる尿酸の値が高くなる状態で、痛風の原因となることが知られています。国際共同プロジェクト「高尿酸血症遺伝疫学コンソーシアム(GUGC)」への参加を通じて、14万人以上の欧米人、アジア人、アフリカ人を対象とした解析を実施し、高尿酸血症の発症に関わる遺伝子領域を新たに18か所発見することができました。本研究は、複数の人種を対象とした遺伝子解析研究として、過去最大規模のものとなりました。今回の成果は、高尿酸血症の発症の仕組みの解明とともに、新たな治療薬の開発につながるものと期待されます。
■『Nature Genetics』オンライン版掲載

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