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2025.2.21
ニュースプレスリリース
バイオバンク・ジャパン(BBJ)の試料・情報を利用した研究の成果論文が国際科学誌Annals of the Rheumatic Diseasesに掲載されました。
理化学研究所の寺尾知可史チームリーダーら国際共同研究グループは、バイオバンク・ジャパンの登録者約18万人と東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターの関節リウマチの前向き大規模コホート研究に登録された患者群約2,400人のDNAを用いて日本最大規模の体細胞モザイク[1]と関節リウマチの関連解析を実施しました。その結果、男性の性染色体に生じるY染色体喪失モザイク(mLOY)[2]が、高齢発症関節リウマチ [3]のリスクの増加に関わることが分かりました。一方、60歳未満で発症した若年発症関節リウマチについては、mLOYがそのリスクを低下させることも分かりました。さらに高齢発症関節リウマチにおいてmLOYは遺伝要因であるポリジェニックリスクスコアと相互作用し、リスクの上昇と関連することも分かりました。
本研究の成果は、高齢発症関節リウマチの病態解明に加え、自己免疫疾患の性差・免疫老化のメカニズムの解明に貢献すると期待されます。
Mosaic loss of chromosome Y characterises late-onset rheumatoid arthritis and contrasting associations of polygenic risk score based on age at onset
Ann Rheum Dis. 2025 Feb 19:S0003-4967(25)00184-0
https://www.riken.jp/press/2025/20250222_2/index.html
[1] 体細胞モザイク 体細胞に後天的なDNA変異が生じることで、変異のある細胞と変異のない細胞が混ざった状態を「体細胞モザイク」という。以前は造血器腫瘍において認めることが知られていたが、近年健常者においても男性に多く、加齢で増加することが知られている。
[2] Y染色体喪失モザイク(mLOY) 性染色体に生じる体細胞モザイクで、男性のみに生じる。細胞の一部でY染色体が失われ、他の細胞にはY染色体が残っている状態。
[3] 高齢発症関節リウマチ 本研究では、60歳以上で関節リウマチを発症した患者を高齢発症関節リウマチ、60歳未満で発症した患者を若年発症関節リウマチと定義して分析を行った。高齢発症関節リウマチは近年人口の高齢化に伴い、特に日本において増加している。若年発症関節リウマチと比較して、男性の罹患が多く、急性に発症し、肩や膝などの大関節罹患が多いといった、異なる臨床特徴を持つ。