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[研究成果のご紹介]日本人のミトコンドリアゲノムの特徴を明らかに

2020.3.5

その他(分類)研究成果のご紹介

通常、ゲノムというと細胞の核にあるゲノムのことを指しますが、核の外にあるミトコンドリアという膜に包まれた細胞内の小器官にもDNAがあります。男性の精子にはミトコンドリアがほとんどないのでミトコンドリアDNAは母系遺伝[1]をし、また核のDNAよりも頻繁に変化が生じることが知られています。このため、祖先集団からどう枝分かれをしたかといった進化系統の研究によく使われています。また、ミトコンドリアDNAのいくつかの遺伝子は疾患にかかわっていることも知られています。しかし、これまで日本人のミトコンドリアゲノムについて大規模な解析はあまりされていませんでした。

大阪大学、東京大学などの研究グループは、バイオバンク・ジャパンに登録された日本人約2,000人の情報を使い、ミトコンドリアゲノムを解析しました。解析したおもな項目は、共通のDNA多型をもつグループと地域との関連、特定のDNAの変化と病気との関連、核DNAとミトコンドリアDNAの変化パターンの相違などです。その結果、地域差はあるものの大きな多様性があること、まれではあるもののパセドウ病などの疾患との関連が見られること、核DNAとミトコンドリアDNAでは変化の仕方に違いが見られることなどがわかりました。

ミトコンドリアゲノムに関してはまだわかっていないことが多く、ミトコンドリアの謎を今後も追求していきたいと携わった研究者は話しています。

用語解説
[1]母親のみから遺伝情報が引き継がれる遺伝形式のことである。一般的に、受精卵には精子のミトコンドリアは存在せず、母親のミトコンドリアゲノムのみ次世代へ引き継がれていく。

大阪大学によるプレスリリース
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200306_2

成果を発表した論文(英語)
https://www.nature.com/articles/s42003-020-0812-9

※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。

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