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2024.1.31
研究成果のご紹介骨・結合組織疾患(分類)
全身性強皮症は免疫系が何らかの理由で自分の身体を攻撃することで生じる自己免疫疾患の1つで、遺伝や環境が相互に影響して起こる病気と考えられています。このような病気の原因となる遺伝子を特定するためには、未知の遺伝子を含めた幅広い解析を行うゲノムワイド関連解析(GWAS)が役立ちます。全身性強皮症についても、主に欧州系集団を対象としたGWASが、病気のリスクに関わる遺伝子の発見や、病気の仕組みの理解に貢献してきました。
一方で、欧州系集団と遺伝的特徴が異なる東アジア系集団を対象とした全身性強皮症のGWASは、これまでにわずか2件で、規模が小さく結果の信頼性にも限界があり、東アジア系集団に特有の遺伝的特徴は十分にわかっていませんでした。そこで、より多くのデータを集め、信頼性を高めた解析を行い、欧州系集団と共通する遺伝要因だけでなく、東アジア系集団に特有の遺伝要因を特定することが、この疾患の仕組みを理解する上で重要だと考えられていました。
理化学研究所、東京大学などの研究グループは、1,428人の全身性強皮症患者と112,599人の全身性強皮症患者でない人を対象にGWASを行い、この疾患に関連する一塩基多型(SNP)を6つ特定しました。そのうち3つは新規のものです。新たに見つかったSNPの1つは東アジア系集団では別の自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスのリスク因子として知られているものでした。また、欧州系集団での研究から関連因子として報告されていたSNPは、日本人では別のSNPを併せ持っている場合にのみ、リスク因子となることもわかりました。
この研究成果は、全身性強皮症を含む自己免疫疾患のゲノム研究をさらに進めるきっかけとなり、将来的には病気の診断や治療方法の向上に役立つことが期待されます。
東京大学によるプレスリリース
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/10771.html
成果を発表した論文(英語)
GWAS for systemic sclerosis identifies six novel susceptibility loci including one in the Fcγ receptor region
※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。