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2024.6.21
内分泌代謝疾患(分類)研究成果のご紹介
糖尿病は日本のみならず、世界でも患者数の多い重大な病気です。全世界の患者数は2021年の時点で5億2900万人で、2050年には13億1,000万人を超えると予測されています[1] 。これまでの研究から、糖尿病の発症には生活習慣だけでなく、遺伝的なリスクが関係していることがわかっています。また、家族に糖尿病の人がいるかどうかという家族歴も糖尿病の重要なリスク因子の一つと言われています。
東北大学、東京大学などの研究グループは、東北メディカル・メガバンク機構に登録した糖尿病ではない地域住民の方々を対象に、糖尿病の発症リスクを調べました。バイオバンク・ジャパンで行われたゲノムワイド関連解析(GWAS) の結果を利用して算出した糖尿病の遺伝的リスクを測るポリジェニック・リスク・スコア(PRS) と、健康的な生活習慣(肥満でないこと、お酒を飲まないこと、適度に運動をすること、飲酒量や脂肪肝の指標となるγ-GTP値が低いこと)のスコア、そして家族歴を組み合わせて、糖尿病発症との関連を調べました。明解な解析結果が得られるように、 登録者に継続的な追跡調査を行ってデータを集める縦断研究という手法が使われました。
その結果、PRSと生活習慣はそれぞれ独立して糖尿病発症と関連しており、PRSが低くても、不健康な生活習慣の人ほど糖尿病になるリスクが高いことがわかりました。また健康的な生活習慣を守っていても、PRSが高い人は、糖尿病になるリスクが高いことも確認されました。さらに家族に糖尿病の人がいる場合、たとえ遺伝リスクが低く、健康的な生活習慣でも、糖尿病になるリスクが高いことが分かりました。
この研究は、健康的な生活習慣が糖尿病予防に重要であることを示しています。また、家族歴や生活習慣にPRSを加えることで、発症リスクが高い人をより正確に特定できる可能性があり、定期的な健康診断や早期予防の重要性が強調されました。
東北メディカルメガバンク機構による記事
https://www.megabank.tohoku.ac.jp/news/58152
成果を発表した論文(英語)
Genetic Risk, Healthy Lifestyle Adherence, and Risk of Developing Diabetes in the Japanese Population
<参考>
[1]Institute for Health Metrics and Evaluation (IHME). Global, regional, and national burden of diabetes, 1990–2021, with projections until 2050. Healthdata.org, 2023. https://www.healthdata.org/research-analysis/library/global-regional-and-national-burden-diabetes-1990-2021-projections.
※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。