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2025.3.5
ニュースプレスリリース
バイオバンク・ジャパン(BBJ)の試料・情報を利用した研究の成果論文が国際科学誌 Cell Genomicsに掲載されました。
東京大学大学院医学系研究科の曽根原究人助教(研究当時)と岡田随象教授らの共同研究グループは、慶應義塾大学で収集した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種者2,096名の検体を用いて、免疫反応と生殖細胞系列変異 [1]との関連についてゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施しました。その結果、COVID-19ワクチンの抗体価およびT細胞の免疫反応に関わる2つの遺伝子領域を同定しました。そして、これらの領域の遺伝子における遺伝子多型 が、免疫反応の個人差と関連することを明らかにしました。さらに、BBJおよび英国のUKバイオバンク [2]のデータを用いた解析により、生殖細胞系列変異のみならず、性染色体に後天的に体細胞変異 [3]が生じることで抗体獲得能が低下すること、感染症や免疫疾患へのかかりやすさが上昇することを明らかにしました。
本成果は、将来のパンデミックへの対抗策となるワクチン開発・接種戦略策定に役立つことが期待されるだけでなく、加齢に伴って生じる免疫機能変化のより詳細な理解につながることが期待されます。
Germline variants and mosaic chromosomal alterations affect COVID-19 vaccine immunogenicity
Cell Genomics, Volume 5, Issue 3, 12 March 2025, 100783
https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/PR/2025/release_20250305.pdf
[1] 生殖細胞系列変異 生得的に有している遺伝子変異であり、個体の全細胞に共通して見られる。遺伝情報として子孫に受け継がれる。
[2] UKバイオバンク 英国全域の 40~69 歳のボランティア約 50 万人から遺伝情報と表現型の情報が集められた世界最大規模の国家的な生体試料バイオバンク。世界中の研究者にリソースを提供している。
[3] 体細胞変異 後天的に獲得する遺伝子変異であり、多くの場合変異を起こした一部の体細胞においてのみ見られる。原則として子孫には受け継がれない。