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2025.7.1
その他(分類)研究成果のご紹介
血液のもととなる細胞の遺伝子に変化が起き、その変化をもつ細胞が増えていくことを「クローン性造血」と呼び、年齢とともに自然に生じる現象として知られています。クローン性造血ではさまざまな遺伝子の変化が観察できますが、ごくまれにがん関連遺伝子として知られるTP53遺伝子に変化が起きていることもあります。
理化学研究所と東京大学の研究グループが、がんではない日本人14万597人の遺伝情報を解析したところ、1157人でTP53遺伝子に変化のあるクローン性造血が見られました。追跡調査の結果(対象は約8万人)から、TP53遺伝子に変化のあるクローン性造血の見られる人では、血液がん(骨髄系腫瘍、リンパ系腫瘍)や呼吸器疾患(間質性肺疾患、慢性下気道疾患、肺がん)による死亡リスクが高まることがわかりました。その一方で、心血管疾患との明確な関連は見られませんでした。
さらに、TP53遺伝子に変化のあるクローン性造血と、遺伝的な体質や生活習慣の相互作用も明らかになりました。生まれつきアルコール代謝にかかわるALDH2遺伝子に変化がある人がこのクローン性造血を併せ持つと骨髄系腫瘍による死亡リスクが高くなっていました。また、TP53遺伝子に変化のあるクローン性造血でタバコを吸う人は、どちらか一方だけの人よりも呼吸器疾患のリスクが高まることもわかりました。
加えて、炎症に関わる IL6R遺伝子の特定の変化を生まれつき持つ人では、TP53遺伝子に変化があっても呼吸器疾患への影響が抑えられる傾向がありました。
この研究は、加齢や生活習慣と遺伝的な体質が複雑にかかわる仕組みの解明や、病気の予防やリスク評価の手がかりになると期待されます。

理化学研究所によるプレスリリース
https://www.riken.jp/press/2025/20250617_2/index.html
成果を発表した論文(英語)
Clinical Significance of TP53-Mutant Clonal Hematopoiesis Across Diseases
※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。