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2023.6.20
研究成果のご紹介骨・結合組織疾患(分類)
背骨が大きく曲がってしまう「側弯症」には原因や発症の時期によっていくつかのタイプがありますが、もっとも多く見られるのは10歳以降のおもに女の子に見られる「思春期特発性側弯症」です。
ここでの特発性とは、原因が特定できないという意味です。身体の成長に合わせて症状が進み、ひどい場合には腰痛や背中の痛みのほかに、肺が圧迫されることで呼吸障害になることもあります。症状が外見に現れるので、精神面での悪影響も無視できません。コルセットで固定する、外科手術をするなどの対処法しかないのが現状で、治療法を探るためにもどういうメカニズムで病気が進むのかの理解が待たれています。
この成果は、ゲノム解析を得意とする理化学研究所生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームと、慶應義塾大学医学部整形外科学教室を中心としたこの疾患の専門家集団である日本側彎症臨床学術研究グループによるものです。この研究グループは、この疾患としては世界最大規模となる6,000例を超える検体と臨床情報、そしてバイオバンク・ジャパンの約16万人のデータを用いて、これまでにも思春期特発性側弯症に関連した遺伝子を多数、報告してきました。
思春期特発性側弯症は多数の遺伝子が関係する遺伝的な要因と環境的な要因の両方の影響を受けていると考えられています。医療現場での観察から、思春期特発性側弯症と肥満度の指標となる体格指数BMIの低さ(やせ気味)には関連があることが推測されており、今回と同じ研究グループの2019年が発表した研究でも、遺伝的な太りにくさと思春期特発性側弯症に関係があることは示されていました。しかし、それが因果関係であるのかどうかまではわかっていませんでした。
今回の研究では、その側弯症に関連するとわかっている複数の遺伝子およびBMIに関係すると知られている複数の遺伝子を対象に、因果関係を明らかにできる「メンデリアン・ランダマイゼーション」という手法で解析しました。その結果、太りにくい遺伝的因子をもつ人は思春期特発性側弯症の発症リスクが高いことがわかりました。一方で、この側弯症を発症しやすい遺伝的要因は、必ずしも太りにくいわけではないこともわかりました。発症リスクの高さが原因となって太りにくいわけではないことを示しています。今後、筋肉量などBMIに関連する因子とこの側弯症の関連を調べることなどによって、発症メカニズムの解明に近づくと期待されています。この成果はFrontiers in Endocrinologyのオンライン版に2023年6月に発表されました。
理化学研究所によるプレスリリース
https://www.riken.jp/press/2023/20230620_1/index.html
※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。