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2022.12.1
皮膚疾患(分類)研究成果のご紹介
アトピー性皮膚炎の多くは乳幼児期に発症しますが、学童期や思春期以降に発症する例もあり、年齢によって病状にも違いのあることも知られています。アトピー性皮膚炎のリスクを高める遺伝的要因はこれまでにも研究されていますが、発症年齢の違いに注目して遺伝子を調べた研究は少なく、とくに多数の遺伝子を対象にしたものはありません。
理化学研究所、東京大学などの研究グループは、以前に行ったゲノム解析のデータをさらに詳しく調べ、発症年齢にかかわる遺伝子を突き止めました。使われたのはバイオバンク・ジャパンに登録された日本のアトピー性皮膚炎の患者さん2,597人(うち、発症年齢のわかる患者さんは1,344人)とアトピー性皮膚炎患者ではない110,504人のデータです。
この研究成果は、発症年齢の違いによる症状の違いを解明したり、それに基づいた治療法を選んだり、遺伝的リスクの高い人に早めの治療開始を促すなど、一人ひとりの体質に合った医療につながると期待されます。
アトピー性皮膚炎は家族に患者がいると発症リスクが高まることから遺伝的要因があることが推測され、それを探る研究も行われてきました。今回と同じ研究チームによる2021年の研究でゲノム上の17の領域(遺伝子や、遺伝子の働きを調節するエンハンサーと呼ばれる領域)がアトピー性皮膚炎へのなりやすさに関連のあることがわかっています。遺伝子やエンハンサーなどのDNA配列には人によってわずかな違いがあり、ほとんどは健康などに影響を及ぼすことはありませんが、ときに疾患へのリスクを高めることがあります。そうした違いのあるDNA配列をリスクアレルと呼んでいます。
研究グループは17のアトピー性皮膚炎関連領域のうち、NLRPO10という遺伝子のリスクアレルをもっていると、発症年齢が3.28年ほど早まることを突き止めました。このNLRPO10遺伝子のリスクアレルは2021年の研究で見つかったもので、日本人に固有とみられています。ほかの16の領域についても持っているリスクアレルの数が多いほど発症年齢が早まり、平均してそれぞれのリスクアレルがあると発症年齢が約半年早まることがわかりました。
さらに17の領域のそれぞれがもたらす効果量は、発症年齢によって変わることもわかりました。アトピー性皮膚炎では発症年齢によって病状に違いのあることが知られています。ゲノム上の17の領域はそうした年齢による違いについてもかかわっている可能性があると考えられます。
この研究を行ったのは理化学研究所(理研)生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの寺尾知可史チームリーダー(静岡県立総合病院臨床研究部免疫研究部長、静岡県立大学薬学部ゲノム病態解析講座特任教授)、ファーマコゲノミクス研究チームの曳野圭子特別研究員、莚田泰誠チームリーダー、東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻複雑形質ゲノム解析分野の小井土大助教(理研生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チーム客員研究員)らの研究グループです。この研究成果はJournal of Investigative Dermatology』(2022年12月号)に掲載されました。
理化学研究所によるプレスリリース
https://www.riken.jp/press/2022/20221121_1/index.html
成果を発表した論文(英語)
Genetic Architectures Underlie Onset Age of Atopic Dermatitis
※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。