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[研究成果のご紹介]体細胞モザイクが感染症の重症化リスクを高める

2021.6.1

感染症(分類)研究成果のご紹介

高齢者の感染症は重症化しやすいことが知られていますが、その理由は詳しくわかっていません。一方で、細胞は分裂のたびにある割合でDNA複製にエラーが生じるので、そうした後天的な変異のある細胞と変異のない細胞が混ざり合う「体細胞モザイク(mCA)」の状態になることがあり、それは高齢者ほど割合が高いと予想されます。

米国ハーバード大学などの国際共同研究グループは、約77万人の血液試料のデータ解析から、mCAをもつ人は、女性よりも男性が多く、年齢とともに割合は高くなり、さらにmCAをもつ人では重症感染症になるリスクが高いことを明らかにしました。

解析に使われたのは、日本(バイオバンク・ジャパン)、英国、米国、フィンランドの計5つのバイオバンクのデータです。血液細胞の全染色体にmCAが10%より多く存在する人の割合は、40歳未満で0.5%ですが、80歳以上では26.5%に達していました。

さらに英国、米国、フィンランドのデータから、mCAを持つ人は持たない人に比べて、発症するリスクを表す指標であるハザード比が呼吸器感染症では1.4倍、消化器感染症では1.5倍、泌尿器系感染症では1.2倍でした。英国、米国のデータでも、mCAを持つ人のほうが新型コロナウイルス感染症で入院したり(英国)、重症化したり(米国)しやすくなることが読み取れました。

この研究は、mCAの有無を調べることで、感染症の発症リスクや重症化リスクの高い人を特定し、パンデミックのような状況下でも適切な対応をすることにつながると期待されます。

理化学研究所によるプレスリリース
https://www.riken.jp/press/2021/20210618_1/index.html

成果を発表した論文(英語)
https://www.nature.com/articles/s41591-021-01371-0

※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。

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