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[研究成果のご紹介]日本人の鼠径ヘルニア(脱腸)に関わる遺伝子を特定 -ヨーロッパ系以外の集団で初めて-

2021.8.21

消化器疾患(分類)研究成果のご紹介

臓器や組織が本来の場所からはみ出る状態をヘルニアといい、椎間板ヘルニアや鼠径(そけい)ヘルニアがよく知られています。鼠径ヘルニアは脱腸とも呼び、腸などが腹壁の弱い部分から皮下にはみ出てしまう状態です。自然には治らず薬でも治せず、進行すると合併症の原因となるため手術が行われます。鼠径ヘルニアになる仕組みは詳しくはわかっておらず、発症には遺伝的要因もかかわるとされています。

理化学研究所、東京大学などの研究グループは、バイオバンク・ジャパンに登録された約175,000人のデータを使い、ヨーロッパ系以外の集団としては初の鼠径ヘルニアのゲノムワイド関連解析(GWAS)を行いました。さらに、英国のUKバイオバンクのデータを加えての解析も行いました。

ヨーロッパ系集団でも日本人集団でも、エラスチン遺伝子の近くから発症に関連する領域が見つかりましたが、その位置は異なっていました。エラスチンは皮膚の弾力維持に重要で、鼠径ヘルニアとの関連は以前から注目されていました。この結果は、エラスチン遺伝子の働きを調節する領域の変化が発症にかかわるという共通性が両集団にあること、一方で、その変化は両集団で異なることを示しています。

さらに、細胞同士の接着に関する遺伝子や消化管に関する遺伝子も鼠径ヘルニア発症に関連するとわかりました。今回の成果は、鼠径ヘルニアの理解につながるだけでなく、異なる集団を使っての解析の重要性も示しています。

東京大学によるプレスリリース
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00115.html

成果を発表した論文(英語)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S235239642100325X

※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。

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