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[研究成果のご紹介] 不育症に関わる遺伝子の発見 -免疫と細胞同士が接着する分子の関与が明らかに

2024.7.17

婦人科系疾患(分類)研究成果のご紹介

妊娠はするものの、流産や死産を2回以上繰り返して赤ちゃんが得られない状態を「不育症」と呼んでいます。原因としては、カップルのどちらかの染色体異常、受精卵の染色体異常、子宮の形などが挙がりますが、不育症のおよそ半分は原因不明です。また発症のメカニズムも十分にわかっていません。

東京大学、大阪大学などの研究グループは、不育症に関する過去最大規模のヒトゲノム解析を行い、不育症の発症リスクにかかわる遺伝子領域を同定しました。

同研究グループは、名古屋市立大学病院に通う原因が特定できない不育症の女性1,728名と、比較対照用としてバイオバンク・ジャパン(BBJ)に登録している不育症ではない女性24,315名から得られたゲノム情報を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施しました。その結果、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子とカドヘリン11(CDH11)遺伝子での塩基配列の変化が不育症の発症に関わっていることを明らかにしました。

HLAは免疫系が排除すべき相手(非自己)か排除すべきではない相手(自己)であるかを見分けるプロセスにかかわっています。妊娠は母体のなかに非自己である胎児がいる状態ですが、何らかの形で免疫系は制御されていると考えられています。不育症では以前から免疫系のかかわりが議論されていましたが、それを裏づける結果が得られました。また、カドヘリン類は細胞と細胞をくっつけるタンパク質で、カドヘリン11は将来の胎児側を包む膜を子宮内膜に固定して胎盤ができるときにはたらくことがわかっています。

今回の研究成果は、不育症の発症における遺伝的背景を明らかにし、原因不明の不育症の発症メカニズムやその進行 の解明につながるとともに、将来的には新しい診断法や治療法の開発にもつながることが期待されます。

東京大学からのプレスリリース記事
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400244372.pdf

成果を発表した論文(英語)
https://www.nature.com/articles/s41467-024-49993-5

※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。

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