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2024.10.15
その他(分類)研究成果のご紹介
多くの遺伝子がかかわる疾患に対して、個々の遺伝子の関与の強さを考慮しながらリスクをスコア化するポリジェニック・リスク・スコア(PRS)の研究が近年、盛んになっています。一方で、体外受精で得た受精卵(胚)のゲノムを解析し、疾患や身長などのPRSを算出して、好ましい胚を選べることをうたうサービスが海外にはあります。PRSには複数の計算法があり、研究者ごとに使う手法が異なるのが現状です。PRSによる胚の選択の妥当性を検証しました。
検証を行ったのは大阪大学、九州大学などの研究グループです。バイオバンク・ジャパンの公開ゲノムデータを使って仮想的に500組のカップルをつくり、10個の胚を得ました。これに対し、身長と2型糖尿病に関するPRSを6種類の計算法によって求めました。その結果、身長に関してはどの2つの計算法を調べても一致率は30%でした。糖尿病に関しては、ある計算法ではPRSが最小だった(糖尿病にかかるリスクが最も低いと判定された)胚が別の計算法では最大になった(糖尿病にかかるリスクが最も高いと判定された)例もありました。
以上の結果から、PRSを胚の選択に使うにはまだ技術的に大きな課題があることが示唆されました。研究グループは、特定の疾患・形質(ここでは糖尿病と身長)にPRSを使ってもほかの疾患などの情報は得られないこと、さらには胚の選択にPRSを使うこと自体への倫理的な課題についても指摘しています。
なお、日本では法的な規制はありませんが、日本産科婦人科学会のガイドラインで胚の遺伝的検査の実施は単一の遺伝子が原因となる深刻な遺伝性疾患などに限定しており、糖尿病のようなたくさんの遺伝子がかかわる疾患や身長のような形質に関しては実施の対象外になっています。
大阪大学によるプレスリリース
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20241014_1
成果を発表した論文(英語)
Inconsistent embryo selection across polygenic score methods
[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。