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2023.7.23
研究成果のご紹介骨・結合組織疾患(分類)
背骨のすぐ後ろを走る靱帯が骨化して、その後ろにある脊髄や神経を圧迫してしまう脊柱後縦靭帯骨化症(OPLL)という難病があります。日本人をはじめとする東アジア系集団に多いことや50歳前後での発症が多いことが知られていますが、なぜ骨化が起きるのかはわかっていません。手足のしびれや痛み、運動障害・感覚障害などの症状が重い例では、手術で神経の圧迫を取り除きますが、根本的な治療法はなく、予防法も確立していません。一方で、遺伝要素の関与や肥満、2型糖尿病との関連などが以前より注目されています。
理化学研究所、北海道大学などの研究グループは、バイオバンク・ジャパンに登録された日本人のOPLLの患者さん2,010人を含む2万人以上のデータを使い、OPLLの発症にかかわる染色体上の領域を突き止めました(下図)。OPLLとしては世界最大規模の全ゲノム解析となります。得られた知見はOPLLそのものの理解や新しい治療法・予防法の開発につながると期待されます。
今回の解析から、OPLLの発症との関連が強い染色体上の領域として、新しく8つを発見しました。同じ研究グループは以前にも6つの領域を見つけ出し、その機能を調べていましたが、6つだけでは説明しきれないことがわかっていました。今後、今回の8つの領域の働きを調べることでOPLLを発症するまでのメカニズムがさらに詳しくわかり、そこから治療法や予防法につながる手がかりが得られるかも知れません。
また、今回、研究チームは肥満や白内障、子宮筋腫、骨粗鬆症といった94の疾患などに対して、OPLLと相関があるかどうかを調べました。その結果、肥満や2型糖尿病とは相関が高く、骨粗鬆症とは負の相関(骨粗鬆症の人ではOPLLの発症は起きにくい)が見られました。これは医療の現場で得られてきた知見とも一致します。さらに、因果関係がわかる手法で解析したところ、肥満や2型糖尿病、骨密度の高さとOPLL発症に因果関係が認められました。
この研究成果は2023年7月にeLife誌に発表されました。
理化学研究所によるプレスリリース
https://www.riken.jp/press/2023/20230718_1/index.html
成果を発表した論文(英語)
https://elifesciences.org/articles/86514
※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。