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[研究成果のご紹介] 体格指数を加えて2型糖尿病の遺伝的リスク予測精度を向上 -やせているのに糖尿病になりやすい体質-

2024.6.12

内分泌代謝疾患(分類)研究成果のご紹介

血糖値の高い状態(糖尿病)をそのままにしておくと、血管が傷つき、心臓病や腎不全といった深刻な病気につながるおそれがあります。糖尿病には食生活や運動習慣といった環境要因のほかに遺伝要因も影響しているといわれます。日本の糖尿病患者には太っていない人も多く見られ、この点は肥満者の患者が多い欧州系集団とは異なっています。日本人と欧州系集団との遺伝的な違いを考慮した研究が必要です。

大阪大学、東京大学などの研究グループは、肥満・やせの程度を示す体格指数(BMI)を使って2型糖尿病の遺伝的な発症リスク予測の精度を確認しました。また日本人集団と欧州系集団の遺伝的な違いを補正する機械学習手法を組み合わせて、遺伝的リスク予測の精度を向上させました。

同研究グループはバイオバンク・ジャパン(BBJ)と英国のUK バイオバンクの登録者である2型糖尿病患者5.5万人と糖尿病ではない14万人のデータを使い、BMIの高い群と低い群に分けて、ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)の予測精度への影響を調べました。その結果、BMIが低い肥満ではない集団では、PRSの予測精度がより高く、遺伝的な発症リスク予測がしやすいことが分かりました。この傾向は、BBJの第2コホートと東北メディカル・メガバンク計画の2型糖尿病患者1.7万人と対照群4.2万人のデータを使った再現性の検証においても、BMI25 以下の集団で遺伝的予測精度が高いという結果が確認されました。

さらに、同研究グループは、このような肥満ではない糖尿病の遺伝的予測精度の高さの背景に、膵臓からのインスリン分泌不全に関わる遺伝子群が影響していること、また肥満ではない糖尿病患者では神経障害と網膜症の合併率が高く、適切な治療薬選択による合併症予防が重要であることを示しました。

本研究成果は、2型糖尿病の遺伝的リスクの予測に関する課題を解決する糸口を示し、将来的に、糖尿病や合併症の予防に関する個別化医療に貢献することが期待されます。

大阪大学によるプレスリリース記事

成果が発表された論文(英語)
https://www.nature.com/articles/s41588-024-01782-y

[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。

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