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[研究成果のご紹介] 一般に多いタイプの緑内障の遺伝的リスク推定法を開発 -個人の遺伝的リスクの予測から早期発見と予防法の構築へ- 

2024.7.18

眼科・耳鼻科疾患(分類)研究成果のご紹介

緑内障は日本の視覚障害の原因の第一位で、ある調査では40歳以上の約20人に1人という有病率の高さが見られました。緑内障にはいくつかのタイプがありますが、一般に多いのは軽度の眼圧上昇に加え、視野障害の進行も比較的ゆるやかな「原発開放隅角緑内障(POAG)」です。その発症には眼圧や近視といった眼科的な要因に加えて、遺伝的な要因もかかわっていることがわかっていますが、アジア系集団を対象として遺伝的ななりやすさを調べた研究はあまりありませんでした。

九州大学、東北大学などの研究グループは日本人に適したPOAGの遺伝的リスク推定法の開発に取り組みました。バイオバンク・ジャパン(BBJ)が実施したゲノムワイド関連解析 (GWAS)(POAG患者3,979人 / 対照群30,279人)の統計データを使い、POAGの遺伝的リスク推定法を複数開発し、それらの推定法の精度を東北大学が集めた患者・対象群のデータセットを使って検証しました。その結果、過去の研究によってPOAGのなりやすさにかかわることが報告された遺伝子バリアント127か所のうちの98を使った推定法が最も高い判別精度を示しました。日本緑内障学会や日本眼科学会の患者・対象群データセットでも、この遺伝的リスク推定法が同様の精度を示すことが確認できました。
さらに、久山町研究の一般住民のデータセットでこの推定法を検証したところ、遺伝的リスクが高い群では、実際にPOAGの患者が多いことや、POAGを発症していなくても眼圧が高いことなどがわかりました。

日本人に適したPOAGの遺伝的リスク推定法を開発したことで、一人ひとりの遺伝的な緑内障のなりやすさの違いに応じたスクリーニング検査や発症予防に役立つと期待されます。

九州大学からのプレスリリース記事
https://www.med.kyushu-u.ac.jp/news/research/detail/1643/

成果を発表した論文(英語)
Genetic Risk Stratification of Primary Open-Angle Glaucoma in Japanese Individuals

[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。

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