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[研究成果のご紹介]前立腺がんの「ゲノム医療」に貢献

2020.4.1

がん(分類)研究成果のご紹介

前立腺がんは、世界で2番目に多いがんで、特に遺伝の影響が強いがんとして知られています。原因となる遺伝子として、乳がんの原因遺伝子としても知られるBRCA1やBRCA2を含む8種類ほどが報告されています。

今回、理化学研究所(理研)などの国際共同研究グループは、バイオバンク・ジャパンが集めた7,636人の前立腺がん患者と12,366人の対照群のDNAを使い、理研が独自に開発した方法で解析しました。原因と考えられている8種類の遺伝子について調べたところ、1,456個の遺伝子バリアントを特定しました。

見つかった遺伝子バリアントを国際的なデータベースで確認したところ、登録されていた670個(46.0%)のうち、58個は病的バリアント、216個は病的バリアントではない遺伝子バリアント、残りの396個は判定できませんでした。そこで、国際コンソーシアムと協力し、1,456個の遺伝子バリアントを一つ一つ調べた結果、136個(9.3%)が病的バリアントであるとわかりました。

また、136個の病的バリアントについて、患者群と対照群でどれくらいの割合で見られるかを調べたところ、患者群の2.9%、対照群の0.8%で確認され、病的バリアントがあると前立腺がんへのなりやすさが約3.7倍高くなることが明らかになりました。さらに、遺伝子ごとに見ると、BRCA2、HOXB13、ATMの3つの遺伝子が前立腺がんの発症に関係していることがわかりました。

次に、病的バリアントを持つ人がどのような臨床的特徴を持っているかを調べたところ、病的バリアントを持たない人よりも前立腺がんと診断される年齢が2歳若いこと、喫煙歴や飲酒歴がある人が多いこと、家族に乳がん、膵がん、肺がん、肝がんの患者がいる割合が高いことなどが明らかになりました。

今回、明らかになった遺伝子や病気のリスク、そして臨床情報の大規模なデータは、今後、前立腺がん患者一人一人に合わせたゲノム医療体制を作るために重要な情報になると期待されます。

理化学研究所によるプレスリリース
https://www.riken.jp/press/2019/20190717_1/

成果を発表した論文(英語)
https://academic.oup.com/jnci/article/112/4/369/5520440?login=false

※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。

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