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[研究成果のご紹介]乾癬(かんせん)の原因に関わる新しい遺伝子を発見

2025.8.22

皮膚疾患(分類)研究成果のご紹介

乾癬は、皮膚の新陳代謝のスピードが異常に速くなることで起こる慢性的な皮膚の病気です。皮膚では通常、約1カ月をかけて内側で生じた新しい細胞と表面から剥がれ落ちる古い細胞が入れ替わります。ところが、乾癬では、数日ほどに短くなるため、古い皮膚がはがれきれずにどんどん積み重なって、皮膚が赤くなる、表面が白くかさかさしてはがれ落ちる、かゆみを伴うといった症状が現れます。乾癬には、生まれつきの体質の影響が大きいことがわかっていて、これまでにゲノムワイド関連解析(GWAS)により、多くの遺伝子が乾癬と関係していることが報告されています。しかし、これらの関係している遺伝子を調べても、原因は明らかになっていませんでした。

東京大学、大阪大学などの研究グループは、国内で集めた1,415人の乾癬の患者さんと、3,968人の対照群について、全ゲノムシーケンス(WGS)解析を行いました。この方法では、これまでのGWASでは見つけにくかった、頻度が非常に低い遺伝子の変化(希少変異)やDNA配列の一部が抜けたり増えたりするような変化(構造変異)も調べることができます。

WGS解析の結果、22,783か所の構造変異を特定しました。そして、その中のIFNLR1という遺伝子に欠けた部分(3,300文字分)があり、この欠けた部分がある人は、乾癬になりにくいことがわかりました。さらに詳しく調べると、この欠けた部分により、IFNLR1遺伝子の働きが弱まることもわかりました。このことから、IFNLR1遺伝子の働きが強すぎると乾癬が起こりやすくなる可能性があると考えられます。

希少変異については、遺伝子の変化をまとめて調べた結果、CERCAMという遺伝子が乾癬に関係していることを特定しました。乾癬の患者さんの皮膚を詳しく観察すると、皮膚の内部にある線維芽細胞という、体の組織の構造を支える重要な役割を果たしている細胞で、CERCAM遺伝子が強く働いていることがわかりました。

さらに研究グループは、CERCAM遺伝子を持たないマウスを使って実験しました。このマウスに乾癬のような炎症を起こす薬を塗ったところ、通常のマウスよりも皮膚の炎症がひどくなり、免疫の働きに関係するタンパク質のサイトカインが増えたり、皮膚の表面のすぐ下の部分に、免疫細胞であるT細胞がたくさん入り込んで集まっている状態になることがわかりました。

また、別のIL36RNという遺伝子では、患者さんが少なく、治療が難しい皮膚の病気である全身性膿疱性乾癬に関係する変化がたくさんあることがわかりました。

今回の研究成果は、乾癬がどのように起こるのかを理解する手がかりになり、将来的には、一人ひとりの体質に合った医療や、より効果が高く副作用の少ない新しい薬の開発につながることが期待されます。

東京大学によるプレスリリース
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00348.html

成果を発表した論文(英語)
Whole-genome sequencing reveals rare and structural variants contributing to psoriasis and identifies CERCAM as a risk gene

※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。

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