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2020.10.1
がん(分類)研究成果のご紹介
膵がんは、世界的に増えているがんの一つであり、早期に見つかっても5年生存率が低いという特徴があります。膵がん患者の約10%は、家族に同じ病気の人がいることが多く、その発症には遺伝が関係していることが知られています。また、乳がんや前立腺がんと同様に、膵がん患者の数%は、1つの病的バリアントが病気の原因になると考えられています。
今回、理化学研究所(理研)などの国際共同研究グループは、11個の膵がん関連遺伝子を含む27個のがんに関わる遺伝子を、理研が独自に開発した方法で解析しました。この解析は、バイオバンク・ジャパンで収集された1,009人の膵がん患者のDNAを用いて行われ、3,610個の遺伝子のバリアントを特定しました。
その後、これらの遺伝子のバリアントを米国のガイドラインと国際データベースに基づいて調べたところ、205個が病的バリアントであるとわかりました。これらの病的バリアントの遺伝子ごとの保有割合について、膵がん患者と対照群23,780人で調べたところ、BRCA1、BRCA2、ATMの3つの遺伝子が膵がんの発症に関わっていることが統計学的に明らかとなりました。
また、病的バリアントの有無は生存期間に影響しないなど、これら3つの遺伝子の病的バリアントを保有している人に見られる臨床的特徴が明らかになりました。一方で、機械学習を使って病的バリアントの保有者を予測しようとしましたが、先行研究の乳がんとは異なり、膵がんでの予測は困難でした。
今回、明らかになった遺伝子や病気のリスク、そして臨床情報の大規模なデータは、今後、膵がん患者一人一人に合わせたゲノム医療体制を作るために重要な情報になると期待されます。
東京大学によるプレスリリース
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00051.html
成果を発表した論文(英語)
https://www.thelancet.com/journals/ebiom/article/PIIS2352-3964(20)30409-6/fulltext
※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。