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2025.2.21
研究成果のご紹介骨・結合組織疾患(分類)
関節リウマチは、本来は自分の体を病原体などから守る免疫が誤って自分の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種で、生まれつきの体質と生活環境の両方が関係すると考えられています。最近、日本では、高齢(60歳以上)になってから発症するタイプの関節リウマチが増えています。若い人に多い関節リウマチと比較すると、高齢発症タイプでは男性に多く、肩や膝などの大きな関節が痛みやすいという特徴があります。そのため、高齢発症タイプと若年発症タイプでは、関節リウマチになる原因が違うと考えられてきましたが、これまで詳しいことは、わかっていませんでした。
そこで注目されたのが体細胞モザイク という現象です。体細胞モザイクは年齢を重ねるほど増え、がんや高齢による病気のリスクとの関係があると考えられてきました。また、増加した体細胞モザイクが、さまざまなタイプの自己免疫疾患を引き起こす一因である可能性が指摘されていましたが、関節リウマチとの関係はまだ詳しく調べられていませんでした。
理化学研究所、日本医科大学などの研究グループは、バイオバンク・ジャパンの登録者約18万人と、東京女子医科大学リウマチ膠原病・痛風センターの関節リウマチ患者約2,400人のデータを解析し、体細胞モザイクを特定しました。さらに、関節リウマチ患者ではない人を対照群 として、それぞれの年齢の影響を調整しメタ解析 を行ったところ、男性で、一部の細胞がY染色体を失うような体細胞モザイク(mLOY)があると、高齢発症タイプの関節リウマチのリスクが高くなり、若年発症タイプのリスクが下がる傾向が見られました。
一方で、性別に関係しない染色体や、女性の2本のX染色体のうち1本が年齢を重ねるとともに失われるタイプの体細胞モザイクについては、関節リウマチ全体や高齢発症タイプ、若年発症タイプのいずれにおいても、リスクが下がる傾向が見られました。また、これらは、体細胞モザイクのリスクである喫煙歴の影響を調整しても変わらず、同じ傾向が確認されました。
次に、男性の関節リウマチ患者と対照群を用いて、関節リウマチとmLOYとの関係について、ポリジェニック・リスク・スコア(PRS) と喫煙の影響を考慮し、詳しく調べました。その結果、高齢発症タイプ関節リウマチでは若年発症タイプと比較して、PRSは低いことがわかりました。また、mLOYは、PRSや喫煙歴の影響を調整した上でも、高齢発症タイプのリスクを高める一方、若年発症タイプのリスクを下げる傾向が見られました。
今回の研究成果は、関節リウマチのなかでも特に高齢発症タイプの関節リウマチになる過程や免疫の働きが年齢を重ねることで変わっていく仕組み、関節リウマチの男女差を理解する上でも重要な手がかりになることが期待されます。
理化学研究所によるプレスリリース
https://www.riken.jp/press/2025/20250222_2/index.html
※[研究成果のご紹介]では主に試料・情報をご提供いただいた協力者のみなさま向けに、これまでのBBJが関わる研究成果を分かりやすくご紹介しています。