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2025.4.23
FeaturesTOPICSコラム
「DNAの日」は、ヒトやヒト以外の種の基盤となる構造が見つかったことを記念する日です。視野が狭くなりがちな日々の中で、世界の人々とのつながりや、人間の存在を超えた大きくて優しくて温かい未来のことなどに思いを馳せる日になればと思います。現在、世界ではいろいろな国家・民族間の争いが絶えませんが、私たちの基盤であるゲノムの99.9%が一緒だという事実は、平和の大切さや、すべての人々が心を一つにすることの大切さを思い起こさせます。
私は、医療に関する先端的な技術の倫理的・法的・社会的問題(Ethical, Legal and Social Issues, ELSIと呼ばれる)について研究しています。日本に暮らしていますと、血縁や血筋へのこだわりが強くて、息苦しいと感じることがあります。このような息苦しさを私自身が実体験したせいで、人を区別するのではなく、人を包摂する力をもったゲノムに興味を持ち、特に社会的な観点から研究したくなって現在に至ります。
今後、ゲノムをはじめとして様々なデータの活用が進むと、人の健康や能力、性格などについて、人と人を区別する新たな境界線ができるかもしれません。その境界線は、その人の幸せのために利用されることが大切です。膨大なデータを解析する主体が人間から人工知能(AI)に移行する今、ひとりひとりを尊重する公正な社会を人間が主導できるのか、それともAIが主導できるのかはわかりません。未来に向けてこれらの問題をゲノム分野の研究者と一緒に考えていく必要があるのではないかと思っています。
東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授
理化学研究所 生命医科学倫理とコ・デザイン研究チーム チームディレクター
1993年慶應義塾大学文学部卒業。1995年同大学院社会学研究科修了(社会学修士)。1998年東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻博士課程単位取得満期退学。2002年博士(保健学)取得。2007年より東京大学医科学研究所 准教授。2013年より現職。2023年より理化学研究所生命医科学倫理とコ・デザイン研究チーム チームディレクター兼務。
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